第74話 雨音に隠された君の秘密を何度でも聞き返す
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梅雨を思い出した真夏日の雨。
うっかり傘を忘れた私は友達の好意に甘えて、相合傘で帰り道を歩く。
「よく降るね―」
ビニール傘を叩く強い雨粒に半分消された私の声。
友達なんて声がいつも小さいから、気を抜いたら聞き逃しそう。
普段より耳を意識をしているせいか、知っているのにどこか新鮮な響き。
「こうやってひとつの傘に入るなんて初めてね」
「そいえばそっか」
「人前で寄り添うって、恥ずかしいわ」
気を抜くとピュアになるド変態の友だち。
「私はそんなだけど」
「でも*******」
言葉の後半が聞こえなかった。
なんだろと見上げると不思議そうな顔。
「ごめん最後なんて?」
「でも貴方が傘を忘れるなんて珍しいわね。
って言った」
なるほどと頷く私。
「朝はご飯食べながらニュース流してるからね。
天気予報はバッチリなのさ」
「ならなんで今日は忘れたの?」
「寝坊したから」
「だと思ったわ。
ほんとに***********」
ん?またよく聞こえない。
私が困ってると気がついたのか、もう一回言ってくれた。
「ほんとにしっかりしてるけど抜けてるとこあるわね」
何度もごめんね、だけどさ。
気のせいか聞こえなかったときより、今のほうが長かったような。
「どうしたの?」
訝しげに友達が歩調を少し遅くする。
傘を叩く雨の音はさらに大きくなっていた。
「ううん、ごめんね、なんでもない」
「ならいいのだけど。
貴方ってガマンして*****を***********なタイプだから」
……さっきからたまに聞こえなくなるの、わざとじゃね?
こんなにピンポイントで遮られるとかある?
ぜったいそこだけ声を小さくしてるよね。
「貴方ってガマンして体調を崩すタイプだからって。
そう言ったのよ」
長さが違いすぎませんかのう。
2回バレなかったから調子に乗ったよね?
「あのさ」
「どうかしかしら?」
「雨音で聞こえないのをいいことに」
足を止めた私。
つられて友達も立ち止まる。
いつのまにか雨足は弱まり、雲の割れ目からお昼過ぎの夏が覗いていた。
次第に上がる気温と湿気が不快。
そんな中、私は半目で友だちを見上げた。
「どうかしたかしら?」
「雨音で聞こえないの利用して」
もう一度しっかり言い直す。
言い逃れが出来ないように。
「私に卑猥なこと言ってたよね」
「イッテナイワ」
明後日を見て傘を畳む友だち。
なんとか頑張って聞きとったけど、意味がわからなかった単語を口にした。
「少しだけ聞こえたんだけど、******ってどんな意味?」
「ちょっ、往来でそんな事言わないでよ。
常識がなさすぎるわ!」
「お前が言ったんだろ、さっき私に」
-次回予告-
蟹に勝ちたい
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