第73話 娘さんを私にください
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部屋でごろごろしていると閉まった扉の先から、前の席の友達が誰かと話す声が聞こえた。
さっきトイレ借りるって出て行ったけど、廊下でママとでも会ったのかな。
律儀な奴でいつも挨拶やちょっとした雑談を欠かさない。
私には真似できないな。
「お母様とお会いしたわ」
部屋に戻ってきた友達。
やっぱりそうだったか。
「久しぶりにお会いしたけれど、相変わらず美人ね」
そう言いながら私の顔を凝視してくる。
なによ、この顔に文句でもある?
「どうせ私はママほど美形ではないよ」
頬を膨らませるふりをして抗議をする。
娘から見てもママが年相応以上の見た目なのは知ってるし。
「逆よ」
私の隣にストンと座った友達が片手で髪をかきあげると、神様が戯れで作った美術品が現れた。
近い、近いって。
「貴方が大人になったらああいう風に、もっと素敵になるのねって、そう想像してしまったのよ」
「……バカ」
恥ずかしいことを、息がかかる距離で言うなよ。
「だから娘さんをくださいって言ってきたわ」
「……おい、腐れバカ」
私は友達を引きはがすと、廊下に走り出た。
「ママー!さっきこの重要文化財級バカがいったの冗談だから!
にやにやしてないで話を聞いて!」
必死に言い訳をする私の背に遠くから声がかかった。
「照れなくていいのに」
「まだ早いわ!」
-次回予告-
雨音の猥談
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