第72話 ええ!どうせ私は乳が無いですよ!!
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「あのさ」
あまりに暑い日差しから逃げて入った、帰り道のコンビニのイートインスペース。
二人で冷たいドリンクを飲みながら、効きすぎた冷房を楽しんでいた。
学校の制服って丈夫に作るためなんだろうけど、生地が厚くてもう大変。
家に帰ったら冷たいシャワー浴びたいな。
そう予定を立てている私には、ひとつだけ気になることが。
前の席の友達の視線だ。
「見るなとは言わないけど、凝視されるとさすがに嫌」
なぜか胸をジーと見てくる。
人より目立つ胸に視線を感じるのなんてしょっちゅうだけど、気分がいいものではない。
「違うわよ」
友達が手を伸ばしてくると、私の胸元をちょっと外れて首元のリボンを触り、何かをつまんだ。
「これいつのよ、乾燥しきっているわ」
指先にあったのはご飯粒。
えーと、お昼はサンドイッチだったし、多分朝食のやつ。
いや、失敬失敬。
日頃の行いが終わり過ぎていて勘違いしちゃった。
「ありがとう、全然気がつかなかった」
当然のようにもぐもぐ食べている友達にとりあえずお礼を言う。
お腹壊さないでよね?
「そういえば前から気になってたんだけどさ」
私も同じように友達の胸元を見た。
そこには2年生の学年カラーである赤のネクタイがぶら下がっていた。
「なんでネクタイなの?」
女子はネクタイとリボンを選べるんだけど、圧倒的にリボンが多い。
実際にクラスにも私が知る限り3人くらいしかいないと思う。
友達のをいつも見ていて、ゆらゆらと邪魔そうに思ってたんだ。
「リボンも試したことがあるわ。
ただ、似合わなくてね」
黒いロングヘアーに前髪ぱっつん。
一重ながら大きい瞳は切れあがっていて鋭い。
たしかに綺麗系な顔にネクタイは似合ってるけどさ。
「えー、私は可愛い系も似合うと思うけどな。
あんたは私服とかモノトーンとか落ち着いたの多すぎるよ」
「いいのよ、色を絞っておけばコーディネートも楽だし。
それにネクタイに良いところもあるのよ」
「良いところって?」
友達が自慢げにネクタイを解くと、私の両手を取ってクルクルと巻き付けてきた。
「縛ったりできるわ」
なるほど、それが良いところなんだ、わからん。
「あとはね」
今度は私の目にクルクルと巻いてくる。
「目隠ししたり」
視界が遮られた私の耳元で声がした。
なるほど、やっぱりわからん。
頭からネクタイをむしり取って投げつけた。
「逆に貴方は何故リボンなの?」
何事もなかったかのように結び直している友達。
まあまあ私に酷いことしたからね今。
「可愛いし、それに」
「それに?」
そこまで言って口ごもってしまう。
これを言うと凄く嫌味な気がして。
「な、なんでもない。
可愛いほうがいいなって」
「貴方が可愛いのなんて知ってるわ。
気になるから、今口ごもった内容を教えなさい」
さりげなく褒めてくれた事は嬉しいけど、むしろ言い難くなったよ。
「ほんとに聞きたい?
怒らない?」
「ここでやめられた方がスッキリしないわ」
それはそうだよねと、私は意を決して続きを言う。
「ネクタイするとね胸に乗っちゃって、先が宙に浮いて目立って。
恥ずかしいなって」
大きいには大きいなりの悩みがあるんだ。
友達を見るとネクタイは体にまっすぐ張り付いていて、とても美しいシルエット。
ただその上に乗っている小さな顔が猛暑日とは思えない真冬の冷たさ。
だから言いたくなかったんだよ。
「へー、その悩みは私には縁がないわね」
「だから言いたくなかったんだって!」
「怒ってないわよ。
ええ、怒ってなんかないわ」
「2度続ける時は大体の人類怒ってる時だし!」
「そんなことないわ。
ええ、そんなことないわ」
-次回予告-
娘さんを私にください
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