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第68話 到着まで時間がかかって困るバス

【毎日更新】

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嬉しくて踊ってしまいます。





揺れるバスで私は隣に座る前の席の友達に話しかけた。

真夏とはいえ、冷房がキツクてちょっと震える。


「人に言えない趣味ってある?」

「あるとしても言えないなら答えられないと思うのだけれど」

「あるの?

 ほらほら、言ってみ?」

「言えないというか、たまたま言ってなかっただけだけど。

 人の反射が好きね」

「反射?」

「自分で制御できない動作を見て可愛いと思うの。

 驚かされてビクッとする、しゃっくり、あくび、くしゃみ、そういったものね」

「可愛い……か?」

「フェチと言われる領域だから人それぞれとしか言いようがないわ。

 でも私はそう思う」

「まあ趣味ってそういうものか」

「そうよ、特に気持ちよくて声が我慢できないとかたまらないわ」

「何の話をしてる?」

「何の話をしてるのよ?」


まったくこいつはと揺れるバスの刺激に悪戦苦闘している。


「理解されやすい反射でいうと共感してもらえるかもしれないわ」

「例えば?」

「照れて赤くなるとか」

「あー、それは可愛いね」

「緊張して声が上ずるとか」

「わかるわかる」

「吐きそうとか」

「急にわからない」

「お酒に酔ったり、体調が悪くて吐瀉しそうとかそういうのよ」

「わかんないて言ってるのに、さらに深くすんな」

「もちろん心配が勝つけれど、尊厳的な問題から耐えている必死さにぞくぞくするの」

「わからない、なにもわからない」

「いつか理解できる日が、貴方が大人になる日が来るわ」


こない、絶対来ないから。


「ところでさ、私がなんで急に話を振ったか知っててこんなフェチ告白したんでしょ」


車内の冷房を涼しそうに楽しみながら、灼熱の屋外を見ている横顔が憎たらしい。


「ええ、もちろんよ」


指先で車窓を触る姿は、熱を楽しんでいるかのようにも見える。


「バスに乗った急激な寒暖差でトイレに行きたくなったけど、目的地は遠いから気を紛らわしたいのよね」


あたりだよ!困ってんだよ!ちょっとでも忘れたいんだよ!

なんで自分で制御できないとか、尊厳とかいうかな?

今の私がそれだよ!


「だからね、私ね、貴方を見ていてね」


すごくいい表情をしている友達。


「今とても楽しいの」


-次回予告-

部屋で二人でダラダラ


挿絵(By みてみん)


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