第67話 君に大好きといわれたい夜
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珍しくお昼ご飯に学食に来た私と前の席の友達。
先に食べ終えたので頭上のテレビで流れているニュース番組をなんとなく見ていた。
あまりよくわからない政治経済に続いて、現代らしい問題というか、AIでのクローンボイスの話題になっていた。
間違い電話を装って電話をかけ、相手の声をAIに聞かせて学習。
そっくりなクローンボイスを作成して、親に”オレオレ詐欺”をかける手口があるらしい。
声が本人とかやばいでしょ、さすがに。
「私も試したことあるけれど、かなり似た声が作れるし会話も自然よ」
お蕎麦を食べ終えた友達が手を合わせてから、残っていた水を一息に飲み干す。
「私は工学系の発展は好きだけれど、こういう裏側がどうしても生まれることは悲しいと思うわ」
スマホしか触らない私と、趣味でプログラムまでやってる友達では視点が違うのかな。
テーブルに置いてあった布巾で周りを拭いた友達が立ち上がろうとしたので、その手首を掴んで座りなおさせた。
「ところでさ」
「なにかしら?」
「何を言わせた?」
「どういうこと?」
意味が分からないという雰囲気出してるけど、手の中の脈拍が上がったのを見逃さないぞ。
「さっき言ったよね、試したって?」
「言ったわね」
「誰の声でクローンボイス作ったの?」
今度は手首がだらだらと汗をかきだしていた。
ちょっと不快だけどまだ離してあげない。
「もちろん私の声で作っ……」
「私の声でなく?
一緒に撮った動画くらいたくさんあるよね電話もしょっちゅうしてるし」
「だから私の声で……」
「今ならまだ怒らないよ?」
速攻で喉が渇いたのかコップに手を伸ばしているけれど、さっき飲み干したから空。
残っていた私のをどうぞと差し出すと、自由な方の手で取って一口で飲み干す。
そして大きく息をついて一言。
「貴方の声で作成したわ」
開き直っているような態度だけど、こっちの目を見れていないところを見ると、まだ隠していることがあるなこいつは。
「素直でよろしい」
その一言に安堵した友達が、いまだに掴まれている手首を見る。
「そろそろ離して欲しいのだけれど」
「ごめんね、最後に一つだけ教えてほしいな」
苦情は笑顔でスルー。
こいつなら私の声でモデルを作成する、ここまでは確定事項であり大切なのはここから。
とんでもない卑猥なセリフを言わされたりしてないだろうか。
「もう一度聞くね、私に何を言わせた?」
いつの間にか力が加わって友達の手をギリギリと締め上げていた。
なぜか掴まれている手首だけならず、腕全体どころか首も顔も、見えるところ全部の色が赤に変わってる。
「私のこと……可愛いって言ってもらったのよ」
「ん?」
「一緒にいてねとか、離れないでとか。
あと」
「あと?」
力任せに手を振りほどき、ふてたように窓の外を見る友達。
横顔は茹で上がった蟹みたいな色合い。
そのポーズで数秒フリーズしてから、もう一度口を開いた。
視線をちょっとだけこっちに向けた。
私がどんな反応をするのか確認するように。
「好きって……大好きって言ってもらった」
友達にしては珍しく頬を膨らませて本格的に困っている様子。
「まさかの可愛いかよ」
「この間の夜、構ってくれなくて寂しかったのよ!」
-次回予告-
戦っている君が好き
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