第63話 遠慮なく君がもらって?もらえって言ってんでしょ!
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福引をやった帰り道、私は前の席の友達の家に寄っていた。
1等の旅行券は無事外れたんだけど、なんと6等の焼き菓子の詰め合わせが当たったんだ。
だから突発のおやつパーティー開催。
「いやー、丁度いいのが当たったね」
友達が入れてくれた熱い紅茶を飲みながら、商店街にあるパティスリーの詰め合わせをぱくつく。
専門店のお菓子だけあって美味しいな。
「当てた私に感謝してほしいところよ」
ふふんと自慢げにしながら、お菓子の包装紙と”商店街100年記念大福引”と書かれた熨斗を丁寧に畳んで捨てていた。
3回ずつまわした福引の最後で友達が見事当てたんだ。
私なんて全部残念賞だったのに。
「いいこいいこ、良くやりましたよ」
頭をよしよししてあげると、どう反応したらいいかわからずもじもじしてる。
相変わらず変なとこでピュアだな。
私は近くにあった重い紙袋を友達のほうへそっと押した。
「あ、これきっと貴方が好きな味よ」
友達がドライオレンジにチョコをコーティングしているのを手に言ってる。
「でも一つしかないわね。
齧りかけでもいいかしら?」
「気にしないよ」
私が口をあけると、親鳥のように入れてくれる。
それと同時に重い紙袋を私の方へすっと押してきた。
「やば、ほんとだ。
今度これ買いに行こうかな」
私はすっと紙袋を友達のほうへ押す。
「みて、チラシには他のフルーツのもあるって書いてるわ」
友達がすっと紙袋を私のほうへ押してくる。
「これはまずい、全部買いそう」
私はすっと、以下略。
「何回も行って制覇するのもいいわね」
友達はすっと、以下略。
「あー、でもこのピスタチオのケーキも」
私は、以下略。
「私はモンブランが良いわね」
友達は、以下略。
座るふたりの間で高速で移動する紙袋は、やたら重くて大きくて存在感が凄い。
もはや無言で相手側に押し付けあう二人。
いらない!いらないからこんなの!
「ねえ、私のほうに押しやろうとしてない?」
「奇遇ね私もそう感じていたところよ」
両方から同時に押された紙袋が、とうとうお互いの真ん中で止まる。
「あなたが500人目でしょ?
責任取りなさい」
友達が両手でギリギリと押し込んでくる。
「500組目よ!私たちふたりで500組目!」
負けるかと力を込める私。
なんと私たちは、くじ引き500組目ということで特別な商品をもらったんだ。
それがこの紙袋の中に入ってる。
【商店街100年史】という読み応えたっぷりな本が。
辞書かな?っていう分厚さ。
「はっきり言うわ、私はいらないわ。
貴方が持って帰りなさい」
友達が床から袋を拾い上げると私の胸に押し付けてくる。
「いらない!
貰い物って捨てずらいから!」
こんなのが部屋に居座り続けるなんてごめんだ。
戦前戦中戦後と駆け抜けた歴史らしいけど、ごめん、興味がわかない。
凄いとは思うけどさ。
紙袋から本を取りだした私は、友達の本棚に押し込んだ。
「ちょ、勝手にやめてよ」
低次元な争いは長く続き、喉が乾いて一息に冷めた紅茶を流し込んだ。
再び中央に居座りなおした本。
友達が指先でつつきながら愚痴る。
「そんなに嫌なら断りなさいよ」
「あんなにニコニコしながら渡されたら断れないよ」
確かに受け取ったのは私だけど、あんたも止めなかったじゃない。
「ちょっとトイレ貸してくれる?
なんだかもう疲れた」
私が立ち上がると友達が、どうぞと言ってくれる。
お礼を言って部屋を出るとトイレを素通りして、足音を殺して階段を下りた。
つま先立ちで1階の廊下を歩くと玄関で静かに靴を履いた。
誰もいない静かな場所でようやく落ち着く。
まったくあいつが一緒だといつも騒がしい。
まあそれが楽しいんだけど。
などと考えつつ立ち上がった。
それはそれとして。
「……さて、帰るか」
扉を開けると何かに気が付いた友達が2階から勢いよく降りてくる騒音が。
やべ、急ご。
-次回予告-
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