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第61話 心が壊れるほどの言葉

【毎日更新】

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嬉しくて踊ってしまいます。




別のクラスにいる中学校時代からの友達が珍しく訪ねてきた。

聞いてみると体操服を忘れてしまったから貸してとのこと。

少し前に使ったばかりの、私の特濃スメルを味わうがいいと押し付けて少し雑談してから席に戻った。

その時、ちょっとだけ、あったんだ。


「ねえ、今のあなた、なんていうか個性的よ?」


前の席の友達からすると、私の表情はすごく優れないみたい。


「何かあったの?

 話くらい聞くわよ?」


心配した友達が優しく語りかけてくれた。

ありがとう。

でも、いまだけはその優しさが痛いんだ。


私は席に着くと机に突っ伏して、あらゆる情報を遮断する。

少しだけ、この賑やかな教室でも、一人になりたい。

中学の友達に言われた一言があまりに衝撃的で、辛くて、そうでもしないと処理できそうにないんだ。


「チャイムが鳴るまでここにいるから、落ち着いたら声をかけなさい」


友達の声が、光のように暗闇に漏れ入り、響く。

いつもの低い声とは違い、わざと高くしていて安心させようとしている。

何も聞かず寄り添ってくれていた。

なんどでも言うね、恥ずかしいから心の中でだけど、君は優しいね。

心から、そう思うんだ。

いつか直接伝えるから、少しだけ時間をください。


でも、それでも、私には許せないことがある。


滲む涙を隠すように鼻をかみ、浅く早く呼吸をして心を落ち着ける。

中学の友達が何気なく言った一言。

私の尊厳を壊し、人格を否定する、そんな最大級の侮蔑。

呑み込もうと何度奥歯で磨り潰しても、喉奥でいつまでも私を苦しめていた。


「どうしたの?」


ようやく顔を上げた私を待っていたのは心配気な笑顔。

不安になりながらいてくれてたんだね、待たせてごめん。


「あのね」


どう説明したらいいんだろう、言葉がつまずく。


「ゆっくりでいいから」


私が崩れ落ちないように、見えない手を差し出してくれた。


「ありがと。

 さっき中学の友達が教室に来てね、あんたと話してる私を入り口から見たらしいの」

「うん」


その続きを伝えようとするが、どうしても紡げない。

体と心が、私はそんな人間じゃないと拒否をしている。


「私たちを見てね」


意を決するために同じことを口にした。

勢いをつけないと私はこの先を発することができない。

でもおかげで、ようやく覚悟ができた。


「ふたりの雰囲気がなんだか似てるねって言われた」


どんな哲学者に相談すれば、どんな独裁者から学べば、こんな非人道的なことが言えるんだろう。

あの子に悪気が無いのはわかる。

それでも、あまりに。


「えーと、整理させてもらいたいのだけど」

「……うん」


笑顔が消えていつもの能面真顔に戻った前の席の友達。

よく理解できていないらしく悩んでいる。


「貴方は私と似ていると言われて、塞ぎ込むくらいショックを受けたと」


人間が持ちうるあらゆる感情が抜け落ちた友達の声。


「うん」


それに私は短く一言だけ答えた。


「すっごい失礼ね貴方は」

「そっちの自業自得だよー。

 普段の言動を思い出せよー」


涙が零れ落ちそうだ。


-次回予告-

福引ガラガラ


挿絵(By みてみん)



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