第57話 気持ちいいので1時間に1度はお願いしたいんですが、ご対応は可能でしょうか?
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嬉しくて踊ってしまいます。
休み時間になると、前の席の友達が振り返って話しかけてきた。
昨日あったことをいつもながらの無表情気味だけど楽しそうに。
ご機嫌だなと思いながら聞いていると、その手首に輪ゴムが一本嵌められているのに気が付いた。
家で何かを束ねるのに使った残りかなにかかな。
机に置かれた手首はほっそりとしていて、薄く輪ゴムの食い込んだ痕がついている。
話を聞きながら、なんとなく指を伸ばす。
くいっと引っ張って離すと、パチンという小さな音がした。
「昨夜のことなんだけど」
まったく動じずに喋り続ける友達。
反応なしか。
もう一回。
くいっ、ぱちん。
「さすがの私も困ってね」
眉一つ動かない友達に、なぜか私は少しだけ対抗意識をもってしまう。
くいっ、ぱちん。
くいっ、ぱちん。
一定のリズムで弾いてみるけど、いつも通りの涼しげな顔が崩れることはなかった。
それならもっと遠慮なく。
ぱちん。
ぱちん。
ぱちん。
ぱちん。
ぱちん。
ぱちん。
手首がだんだん赤くなってきた。
表情は変わらないけれどわかってしまった、こいつウキウキしてるな。
ちょっとだけ小鼻がひきついてるのを私は見逃さなかった。
ぱちん。
ぱちん。
ぱちん。
はっきりと赤い手首。
私がだんだん意地になってきたころ、古ぼけたスピーカーから休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
なんだか負けた気がして悔しがっている私。
友達がぴたりと話をやめて姿勢を正すと、赤くなった手首を膝の上に揃えて深々と頭を下げてくる。
「ありがとうございました」
「……どういたしまして」
まるでお茶会が終わり、”結構なお手前で”と丁寧に賛辞を送るような礼儀正しさ。
「とても良いお時間でした」
「まあ楽しんでいるのは途中から知ってた」
この休み時間で初めて満面の笑顔を浮かべた友達が、頬を軽く染めてもじもじしながら話しかけてくる。
ちょっとだけ早口なのは、先生が来る前に返事が欲しいからだろう。
「次の開催はいつかしら?」
-次回予告-
なんか鯖っぽいわね
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