第55話 シンデレラタイムから始まる留守電電話
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「ごめんなさい、電話貸してもらえない?」
「どしたの?」
「電池が切れそうで、家に少し電話したいの」
学校帰りに寄ったファミレス。
そろそろ帰ろうかと暗くなり始めた外を見ていたら、前の席の友達が申し訳なさそうに手を合わせてきた。
「いいよそのくらい」
「ありがとう、ちょっと電話してくるわ」
私のスマホを持った友達がお店から出て、座っている席から見える場所で電話をかけだした。
変なことはしてないよと、プライバシーの塊を借りることへの気遣いなのだろう。
「律儀なことで」
別に中を見られて困ることなんてないのにと、冷えてしなびたポテトを食べた。
しばらくして帰ってきた友達と会計を済ませ帰路につく。
ゆっくり歩いてお別れのカーブミラーの下で手を振り別れた。
家に帰ってからの私はいつも通りで宿題をやって、ご飯を食べて、ごろごろして、お風呂に入って。
そんなことをしていたらいつも寝る24時が近づいてきた。
ついつい触っちゃうスマホは少し離れた勉強机の上に置いて、明かりを消す。
ちなみに常夜灯はつけない真っ暗派。
暗闇で光る壁時計は23時59分を指していて、今日が終わろうとしていた。
明日も良い一日になるよ……う……に…………。
重力に負けた瞼が閉じそうになったとき、机の上が急に明るく輝く。
『深夜12時から始まるミッドナイト歌謡ショー!』
落ちかけていた意識が聞きなれた声で引き戻された。
『一曲目は私で子守唄、お聞きください』
スマホのスピーカーから流れてくる、ねんねんころりよおころりよ。
ピアノを長年やっているだけに音階が完璧で逆に鬱陶しい。
なにやってんだよあいつ、なにやってんだ。
『続きまして二曲目は私で羊の数え歌、お聞きください』
羊が1匹~、羊が2匹~。
これは歌なんだろうか?
我慢ができなくなった私は布団をはねのけて、暗い部屋の中スマホまで歩く。
画面を見るとアラームが24時に設定されており、録音された謎音声が再生されていた。
あのやろう、細かい嫌がらせを。
怒りのこもった指でアラームを止めると、その勢いのまま前の席の友達に電話した。
発信音を聞きながらなんて言おうか考える。
プルルと3コール鳴った後、ガチャリと音がしていつもの声がした。
『もしもし?』
「いやあの、なんでこんなことしてるの」
『一日の終わりを美少女の声で終わらせてあげようと』
「自分で言うか」
『毎日鏡見てるし』
「そんなことよりもさっきのアラーム!」
『こっちこそそんなことよりも大切な話があるわ』
「え?」
『これは留守電メッセージなの。
一人で話していないでピーの後に要件をどうぞ。
ぴー』
……。
「これ朝起きて聞いてるんでしょ!?
もうさすがに今回は!
口きいてあげないんだから!」
大きな声で録音してしまって、ちょっと言い過ぎたか後悔。
まあこのくらいの言い合いは日常だしね。
言いたいことを言い終わって少しすっきりしたので通話を切ろうとすると、なぜか再び声が聞こえた。
『ちなみにさっきのピーは偽物よ。
電子音ではなく私の声だったじゃない。
簡単なことに騙されているのは心配よ。
これが本物。
じゃあお休みなさい』
その言葉の後に電子音で流れるピー。
さすがに悔しくて、数百字の長文メッセージを送りつけてやった。
-次回予告-
荒縄で縛って
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