第53話 正義とは何か、正しいとは何か、常識という武器で人を攻撃する世界なんて私はいらない
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嬉しくて踊ってしまいます。
「風呂キャンって聞いたことある?」
「えーと、お風呂に入らない人、風呂キャンセルだっけ?」
急に質問してきた前の席の友達に、聞いたことがあったスラングの内容を思い出しながら答えた。
「あれって良くないこととされてるわよね?」
「まあ臭いとかあるだろうし」
お風呂に入らないなんて考えたことなくて気にしなかったけど、個人がどうこうではなく人に迷惑かかるからだめでしょ。
事情があるなら別だけど。
「でもそれって本当に正しいのかしら?
私たちの常識を押し付けているだけでは?」
うっ、そう言われるとそうなんだけど、社会って一般的な常識の上に成り立っているものだし。
「当たり前に囚われすぎて寛容さをなくした社会は生きづらいわ。
大多数の意見で少数を押し込める、風呂キャン界隈にも幸福を求める権利があるのに。
そもそも一概に否定するのではなく、自身の体験をもって意見を発するべきだわ。
だって何も知らないのに人を責めるなんて悲しいじゃない!
常識が正義となり知りもしないことを嫌うなんて、私はそんな人間になりたくない。
だから貴方も――」
「いや私は毎日入るから」
聞いているのも面倒なので遮って黙らせる。
こいつが演説するときは大抵ろくでもないのだ。
「面倒だから1行にまとめて」
「風呂キャンしたクッサイ脇に顔を埋めたい」
想像の6倍どうでもよかった。
なによりそんなに臭わないわ、たぶん、失礼な。
「またモザイク多めの動画で新しい扉開けたの?」
「お給料日とセールが重なったから、購入ボタンを押す指が軽いこと軽いこと」
年齢のことはとりあえず置いといて、こいつがそういうのを買っているのは知っているし、なんならたまにレビューを聞かされる。
見事なまでに脳内をスルーして何一つ記憶にないけど。
「へえ、私以外の女の子のでもいいんだ」
とりあえずそろそろ黙ってほしくて、本心では何も気にしてない究極にどうでもいい発言をした。
映像に張り合うつもりはないし、自由に見たらと思っている。
「女優の顔は脳内で貴方に置き換えて楽しんでるわ。
安心して」
「まあまあ本気でやめてねそういうの。
あと安心どころかすっごく怖い」
やっぱり二度と見るな。
-次回予告-
縮まらない指1本分の距離
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