第45話 唾液を合法的にもらう手段
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梅雨入りをして暑さと湿気が混ざった空気。
じっとりとした乾かない汗を忘れたくて、購買でアイスを買ってきた。
お昼休みの残り時間でしっかり楽しむんだ。
「あら良いわね」
職員室に呼ばれていた前の席の友達が、私の大きなカップアイスを見て言う。
それに内心で、良いでしょー自慢をする。
木のスプーンで早速ひとすくいして口に含む。
あっさりとしたミルク味がさっと溶けて消えていく。
やばい、これは無限に食べれる。
「美味しそうに食べるわね」
感動でいつまでもスプーンを咥えてしまっている。
にこにこと取り出すと、唾液で色が変わっていた。
このスプーンって木の味がするから本来は邪魔なんだろうけど、なぜかアイスの時だけは懐かしさも混ざって普通より美味しく感じちゃう。
「実際おいしいしね」
次々と口に運ぶ私を、ただただ見ている友達。
こんなの見ていても面白くないでしょうに。
「食べる?」
一匙すくって差し出すと、長い髪を耳にかけながら薄い唇を少しだけ開けた。
音もなく静かに閉じられると味わうように少しだけ伏し目がちになる。
きっと口内では体温で溶けたアイスが広がり、バニラの香りが鼻へと抜けているだろう。
少し妖艶な描写が脳内で描かれてしまった。
「おいしいでしょ?」
私の言葉に答えず、視線を上目遣いに向けてきた。
長いまつげがバランスよく走る一重の瞳は浅い茶色で、昼の星のように澄んでいる。
何気ない仕草が絵になるのはズルい。
そう思いながらスプーンを咥えたままの友達を見た。
……咥えている時間長くね?
普通はあーんしてアイス食べるのなんか一瞬。
何秒このままのポーズなの私たち。
意味が分からない私に小っさな音が聞こえた、友達の口の中から。
チュー
それはスプーンから何かを吸い出そうと頑張ってる音。
もう必死に、でもバレないようにこっそりと、全力で。
「私の唾液を吸うな!」
出しっぱなしだったノートで友達の旋毛を叩くと、軽くて小気味いい音がした。
まったく本当に何をしてるんだよ、それとなんでどつかれても離さないの。
いまだに吸い続ける友達。
もう諦めた私はその奇行を見続けてやった。
「ふう、美味しいアイスね」
ようやく解放してくれた友達は妙に晴れ晴れとしている。
おいしかったですか、それはなによりで。
私の右手にはスプーン、左手には半分ほど残ったカップアイス。
交互に何度も見てしまう。
スプーンからなにか禍々しいものを感じるのは気のせいだろうか。
「え、このスプーンで残り食べなきゃなの?」
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