第35話 意外と初めてのデート② 手をつなぎたいの?
紫外線から逃げるように降りた地下街。
時間が早くてまだ開いていないお店も多くて、すれ違う人は駅へ向かう人達ばかり。
それに逆らって私は前の席の友達と歩く。
いつも通る通路だけど、いつもより少しだけ会話がぎこちない。
「映画に行きたいんだっけ?」
「ええ、定番のデートっていうのに憧れていて」
駅前で待ち合わせて午前中に映画を見てランチ。
それから一緒に買い物をしたい。
デートの経験値がなさすぎる私ですら思い浮かぶ鉄板プラン。
それを一度やってみたかったらしい。
定期的に少女趣味を発症するのって、こいつに残された良心なのか。
普段からそんな女の子らしい面をもっと出してよ。
「しかも見るのが恋愛映画とか」
「それも定番でしょ?」
嫌いじゃないけど、どこかむず痒くてあまり見ないジャンルだよ。
それをふたりでだとさらに気恥ずかしくなりそう。
どうでもいい事を考えていると、歩調に合わせて揺れていた手が上からそっと握られた。
斜め上を見ると、満足そうな表情の友達。
優越感を感じているのかどこか誇らしげだ。
それが少しカチンと来た。
「これも定番?」
「そうだと思うわ」
そうかもしれないけど、私の知っている定番とは少しずれてる。
どうもしっくりこなくて物足りなくて。
手を振って離すと友達が悲しい顔をしたけど違うんだ、ちょっとだけ待ってね。
所在なさげになった指を取って、私の指と絡め合う。
普段ふれあわない場所がこすれ合い、恋愛映画なんかよりずっと恥ずかしい。
「こっちが定番だと思う」
もう一度斜め上を見ると、ピンク色の唇が小刻みに震えてるけど喜んでくれてるの?
振りほどかれないから拒絶はされていないと思う。
「恋人つなぎは嫌?」
私が力を抜くと逃さないように強く握り返された。
素直に言えばいいのに。
「は、早く行かないと映画が始まるわ」
急に歩幅を広げて歩き出されて、小柄な私はなんとか小走りでついていく。
「身長差を考えて!
時間は余裕すぎでしょ」
あいつは多分きっと今の顔を見られたくないんだ。
だから横を歩かれたくない。
それは私も同じで、少しだけ体温が上がった頬がいつも通りになるよう願った。
ウェーブのかかったボブカットのくせ毛を手ぐしで寄せて、顔を隠した。
-次回予告-
映画を見よう!




