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第27話 モーニングコールで甘えさせて

目が覚めてすぐ、学校の準備を始めないとなと思いながらも、うとうとしていた。

ぎりぎりまでごろごろしようと決意をしたところで、耳元でスマホが振動する。

こんな朝早くにかけてくる人なんてひとりしかいない。


「おはよ、いい天気だね」


カーテンから差し込む光の量は多くて、開けなくても青空が広がっていることが分かった。

休みの日ならそのままお出かけしたいとこだけど、あいにくまだ金曜日。


『ええ、おはよう』


耳に届いてくるのはあまり元気がない声。

さては昨日別れた後に嫌なことがあったな。


「今日は”なしなし”の日なの?」


元気なし、やる気なし、が重なった前の席の友達がぐだる日が定期的にある。

基本的には真面目でずる休みなんてしないんだけど、たまにこうなっちゃう。

人間らしい一面が見えて私は嫌いじゃない。

いつもが化け物なだけに。


『頭も痛い』

「薬は飲んだ?」

『のんだ』

「なら薬が効くまでちょっとお話ししよっか」


時間を確認するとあと15分くらいはごろごろしても遅刻はしなさそう。

妹をもつリアルお姉ちゃんとしては、大きなちびっこのわがままを聞いてあげよう。

どしたん、話し聞くよ?


『昨日バイト先でさ……』

「うん」

『私は関係ないのに……』

「それはつらかったね」

『しかもその後さ……』

「そんなことがあったんだ」

『それなのに……』


耳元で鈴なり声で綴られる愚痴。

それでもだれか個人を攻撃する発言がないのが人として尊敬できて、何より友達として誇らしい。


『はあー』


残ったもやもやもすべて吐き出そうとする大きな溜息。

マイクに風が当たり、ぞわぞわとした音が私に届いた。


「そろそろ動けそう?」

『うん、あのさ』

「どした?」


心がだいぶ軽くなったんだろう、いつも通りの声が聞こえてくる。


『朝から、その、ありがとう』


こういう時だけ謙虚なあいつ。

別にお礼なんていらないのに、言わずにいられない性格なんだろう。


「どういたしまして。

 いつでも電話してきていいからね」


私の言葉に友達は、少しだけの笑い声と気恥ずかしいセリフを贈ってくれた。


『友達でいてくれてありがとう』

「こちらこそ」


数十分後に待ち合わせしてるんだけど、なんかこしょばゆくなりそうだね。


『それはそうとして、今どんな下着履いてるか写真送ってくれない?』

「薬が効いたようでなにより。

 さっさと起きて準備しろ」

『はい』


問答無用で終話を押して飛び起きた。

時計の針はタイムリミットを数分過ぎており、ずいぶん急がないとまずい時間。

ばたばたと準備をしたんだけど髪のセットの時間が足りなくて、いつもより少しだけ癖毛が強い。

仕方ないと諦めて家を駆け出た。

何とか間に合いそうな通学路を足早に進むと、待ち合わせのコンビニの前に友達が立っていた。

いつもは完璧に梳かされている黒髪に今日はアホ毛が目立つ。


「さっきはありがとう」


手に持っていたコンビニ袋を差し出してくる。

中には私が好きなちょっとお高いお菓子がいくつか。


「えー、ありがと。

 あとで一緒に食べようね」


こんななら毎日電話していいよ、と茶化しながら肘でつつくと、友達の切れ長の瞳がきらりと光る。


「それ本当?」

「……たまになら」


癖隠しで編み込んだ三つ編みを指先で叩く。

いいよ、鏡の前に立つ時間を残してくれるなら付き合ってあげても。

君の前では可愛くいたんだ。



--次回予告--

夢の永久機関が完成 編

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