第18話 イカ臭いから君とはキスをしたくない
小さな袋をプラプラさせながら、学校帰りに寄っていたコンビニから出た。
そんな私の手にはハガキくらいの大きさの薄いお菓子が。
買い物をしたときサービスでクジを引いて貰ったんだ。
ちょっと嫌いな駄菓子をどうしようかと考えてたら、前の席の友達に押し付けることを思いついた。
「食べて、臭くて苦手」
15円で売っている平べったい酢イカを、あまり嬉しくなさそうに受け取ってくれた。
「イカの匂いが苦手だったわね」
包装されたまま鼻を近づけて、クンクンとしてる。
友達も苦手なのかちょっと嫌そうな顔。
「君は女の子が好きだから、イカ臭いのは嫌だもんね」
イカとなにが関係あるかはわからないけど、圧倒的にセクハラをされている気がする。
私の知らない知識で辱めてくるのには怒りを覚えるけど、どう叱ればいいのかわからない。
聞いてもいらない情報を嬉々として教え込まれ、嫌な気分になるのがオチで、向こうからしたらその反応がご褒美。
相変わらず無敵すぎないか。
「なぜ私を面倒くさそうに見てるの?」
「まごうことなく面倒くさいから」
封を開けてモソモソ食べている友人から、潮っぽいような酸っぱいような、とにかく嫌いな臭いがしてくる。
思わず一歩離れた。
「押しつけといてそれは酷くないかしら?」
「そうだけどさー」
「さすがに私もそういうのは傷つくわ」
どうでもいい会話をしながらちょっと気になっているんだけどさ。
心なしか私に向けてふーふーしてないか、こいつ。
甘いリップとイカの臭いが混ざってなんとも。
「ねえそれわざと?」
「それ?」
「息吹きかけてきてるの」
「今なら合法的に口臭を嗅がせられるなと」
……全力で嫌がってるのに合法とは?
食べ終わった駄菓子の袋を器用に三角に畳んでポケットに入れる友人。
いつもいつもこうやってからかってくる。
でも知ってるんだ、実は押されることにめっぽう弱いって。
「でも、残念だな。
その新しいリップ好きな香りで”キス”したい気分だったのに」
「え?」
「今度はいつ気分になるんだろ」
ちょっと足早に歩き、並んで歩いていた友人に背中を見せた。
たまには言い返してやろうと思って放った、完璧な嘘。
私たちはキスなんてしたことない。
焦りまくっているだろう顔を背中越しに想像して楽しむ。
「どういう意味!?なんでそんなこと言うの!?」
予想通りいつもの低めと違う高い声で動揺してらっしゃる。
人にいじられるのがどういう気持ちか、たまには味わえ。
してやったりと少しだけ足先でリズムを刻む。
でもこいつとキスか。
そんな日が本当にくるの?
いやいや、ありえないから、うん。




