第15話 毎日会える織姫と彦星
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私の家の2階にあるベランダは広くて洗濯物がたくさん干せる。
ママのちょっとした自慢。
日が落ちた午後8時、私は前の席の友達と並んで座り、空を見ている。
梅雨明けを控えた岡山は過ごしやすい気温だけど、どこかちょっと湿り気を帯びていた。
『一緒に天の川を見ましょう』
そういって泊りに押しかけてきた友達は、さっきから何も言わずに空を見上げていた。
お風呂上がりで湿った髪が夜風で揺れる美しさに、私は呼吸を忘れる。
あいにくの曇り空で星は見えず、街灯やお隣の窓明かりが少し眩しい。
「七夕ってさ」
薄闇を縫う少し低く、耳障りの良い声が、薄桜色の唇から聞こえた。
「機織りの織姫と、牛飼いの彦星が付き合いだして」
語られる神話に私は耳を傾けた。
「いちゃこらばっかしして仕事しないから、怒った神様が二人の間に川を作って1年に1度しか会えなくしたのよね。
覚えたての中学生か何か?」
せっかくの雰囲気が台無しだよばか。
「もう少しロマンチックに言えないかな、ほんとに」
少し唇を尖らせた声に、小さく笑う友達。
その時道路を走る車のヘッドライトが長い黒髪にあたり、きらきらと輝く星の川に見えた。
「もしさ」
星を着た少女が私を見てる。
「1年に1日しか会えないなら、貴方はどうする?」
眩しすぎて、今度は私が空を見上げると、地上の光を映した厚い雲が広がっていた。
「寂しくて苦しくて、会える日を指折り数えながら待つと思う」
そんなに強くない私にはそれだけしかできない。
日々が早く過ぎるように、そう祈ることしか。
「そして会えた日には、たくさん話したいことがあったのに何も言えないかな」
きっとこみ上げた心が喉をふさいじゃうから。
ただただ、その人の体温を感じていたいと思っちゃうよ。
「そういうそっちは?」
空から視線を下すと久しぶりに視線が交差した。
「私は毎日会いに行くわ」
ルール破りな答え。
「いや、だから神様が会えなくした時の話なんだけど」
「例えどんな困難があっても、私は行くわ」
自信と自意識過剰に満ちた黒い双眸が、街の明かりを吸い込み、白く瞬いていた。
ああ、きっとこの子は本当に挑むんだろうな。
「ふふ、あんたらしい。
いいよ、そうなった時は寝ずに待っていてあげる」
雲の上で輝いているだろう星々。
ここからは見えないけれど、今夜ふたりは出会えたのかな?
私たちは、今日も。
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