第115話 私が一番好きなデニール
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※デニール:タイツに使われている糸の太さを表す単位。
数字が大きくなるほど生地がぶ厚くなります。
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前の席の友達と学校帰りに寄った雑貨屋さん。
友達が黒タイツのパッケージを手に考え込んでいた。
「どのくらいのデニールが良いのかしら」
もうそろそろ寒くなるし、冬用に暖かいの買うのかな?
後ろからひょいっと覗くと、80デニールの商品を持っていた。
「少し薄くない?
冬とか私150とか履くよ」
「そこまで分厚いともうタイツというか1枚のボトムスね」
「へへー、暖かさ重視で。
でも80もバランス良いし定番よね」
野暮ったくないし寒さ対策もできるし、良いと思うな。
「そうね、もう少しだけ厚くても薄くても良いのだけれど悩みどころね」
「こだわるね」
「ええ、せっかく買うのだし、一番エロいのにしないと」
えーと、聞き違いかな?
「なんていった?」
「一番エロイのを選ばないと」
「おーけい、聞き間違いじゃなかったわ」
そうだよね、こいつが真剣な顔してるときはこんなだよね。
普通に肌着を選ぶわけないじゃないか。
「だいたいエロいタイツってなによ、どうせその上からスカート着るでしょ」
そんな私の言葉に信じられないという表情の友達。
「貴方は何を言ってるの?正気?」
「おかげさまで、あんたよりはよっぽど正常」
やれやれとオーバーリアクションをしてから友達が、棚から70デニールを取り出すと私に見せてきた。
「黒タイツは膝とかふくらはぎの部分の生地が伸びて、薄っすら透けるのが最高なんじゃない」
「知らんがなお前の性癖なんざ、知らんがな」
「わからないというの!?
黒い生地の向こうに覗く素肌の色気が。
人生損してるわよ?」
「もう一度言う、知らんがな」
そんな目で見られてると知ったら、あんたの前で履きづらくなるんだけど。
これからの秋冬は愛用してるのにどうしてくれる。
「まったく、あなたに失望したわ」
最終的に60デニールを手に取った友達から勝手に信用を失ったみたい。
必要性ゼロの分野の信用だけれども。
むしろ早めに失墜したのが嬉しいよ。
相変わらずだなあとレジでお会計をしている友達を見ていた。
「お待たせ」
友達が帰ってきたのでお店を出た。
やったことはタイツを1枚買っただけなのに、どうしてこうも色々と精神を削られたのだろう。
「はいこれ」
人通りの多い町中の道すがら、友達がさっきのお店の袋を差し出してきた。
中身はあれだよね。
「これって自分用じゃなく私のだったの?」
さも当然のように目の前で頷かれましても、当方としては対応に困るのですが。
「ええ、貴方は去年厚手のものしか履いていなかったから悔しく思っていたの。
今年こそは素的な姿を見たいの」
見た目はにこにこと笑っている無垢な少女だけど、口から出る言葉が邪悪すぎる。
だって寒くなるのを待っていたわ、とか言いながら拳を握りしめてるし。
「あ、ありがと。
あんたが誘拐されて履かないと殺すって、凶悪犯から脅されたくらい切羽詰まったら履くね」
「もっと気軽に使ってほしくはあるわね」
袋の中を見るとSサイズと書いたタイツが。
前に200デニールっていう極厚のやつ見たことあるから、今年はそれを買おうかな。
「で、で、いつ履いてくれるのかしら?
週末のお出かけは?少し冷えるらしいし」
「そ、そうですね、検討します」
「検討……それは何割くらいの確率かしら?」
「5%くらいですかね」
「十分期待できるわ」
ポジティブなのは素晴らしいと思うよ。
こない未来でも待つ時間が一番楽しいもんだよね。
-次回予告-
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