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第112話 愛してるゲームがテクニシャンすぎる

【毎日更新】

評価 or ブクマおまちしてます。

嬉しくて踊ってしまいます。



「第1回愛してるゲーム大会を実施します」


土曜日の午後、集まったは良いけど何もすることがなくだらけてたら、前の席の友達が急に開会宣言を行った。


「……え、なんで?」


愛してるゲームってあれだよね、向かい合って相手に”愛してる”って言って、照れたら負けという。


「昨晩バイトで色々あってね、承認欲求がドバドバ欲しいのよ」

「それはなんていうか、お疲れ様」


数日の短期バイトしかしたことないから、素直に尊敬するよ。


「というわけで、貴方からどうぞ、カモン」


両手を前に出し、指先でくいくいと求められる。

ベッドに横になり枕に顔を埋めてスマホを触っていた私は、そっちに視線だけを向けた。

画面では恋愛漫画のヒロインが告白をしていた。


「はいはい、愛してるよ」


おまけで空いている片手をひらひらと振ってあげた。


「雑すぎないかしら?

 貴方の愛情はそんなものなの?」


急に愛情の容量を聞かれても困るし、それになにより。


「いや、あんたもうニヤけてるし」


いつも無表情気味な友達の口角が大きく上がりピクついている。

瞳も心なしか見開かれてるような。

あいかわらずのチョロイン。


「気のせいよ、喜んでなんてないわ」


口に必死に力を入れているのか、今度は口角が下がり切り怒っているように見える。

でも、どう聞いても声は上機嫌でアンバランスなわけわからない様子になっていた。


「え?私に愛してるって言われて嬉しくないの?

 それは少し悲しいな」

「そういうわけでは無いけど」

「じゃあ嬉しかったんだね。

 そう言ってくれるなら、私も嬉しいな」


ちょっとだけ笑顔を作って小首を傾げた。


「はい、ニヤけたー」


これで2連勝。


「ちょっと卑怯よ!

 これは”愛してる”しか言ってはいけないルールなのでは?」


オフィシャルルールなんて知らないよ。

というか、やるのも初めてだし、何よりやってあげると提案に承諾する前に大会が開催したんだけど。


「でもさ、色んなパターンで私に優しくされるのはお得じゃない?」

「……お得です」

「それにさ、ぜんぶぜんぶ嘘じゃないんだ。

 いつも言えないことを言ってるだけだからさ、そのままの意味で聞いてほしいな」

「……」

「はいニヤけたー」


3連勝。

弱すぎないか?


「いつの間にそんなテクニックを身に着けたの?

 破廉恥よ!」


私はようやくベッドから身を起こして近くにいた友達の髪を撫でた。


「私が変わったって見えたなら、それはあんたの影響だよ。

 染められちゃった」

「……」


4連勝。

連戦連敗の友達が仕切り直したいのか、私をビシッと指さして高らかに叫ぶ。


「本来交互に言うルールのはず。

 次は私の番よ」

「めんどうくさいなあ、もう」


私はベッドから降りると、床に座る友達の前にぺたんと腰を下ろす。

ちょっと乱れていた髪を手で梳かし、肩ひもが見えてしまっていたので隠した。


「……」

「なんでニヤけてんの」


今は何も言ってないでしょうが。


「無防備だったり、よいしょよいしょって身だしなみを整えるのが良かったわ」

「それはどうも。

 で、まだ?」


愛の告白の催促。

友達は喉を数度大きく鳴らして調子を整えだす。

発声練習のように何度か言葉を発して、ようやっと納得がいくコンディションになったらしい。

気合を入れるためにか、手首にしていた白いシュシュで髪を一つにまとめた。


「愛してるわ」


一世一代の大事業の様にイケ顔イケボ。

いや、うん、あのさ。


「なんか違うんだよね」

「それなりに頑張りましたけど!?」

「相手に愛情を伝えるのってドラマチックじゃなくてさ、普段の生活の中でふいに自然に言ってほしいわけよ」

「私には難易度が高すぎるわ」


根が真面目すぎるんだと思うよ。

なんでも全力でやることが正しいわけじゃなくてさ、特別な人にはあえて当たり前に接すること、つまり日常を与えることが正解だったりすると思うんだ。


「そういえば、今したシュシュ初めて見た」

「そうだったかしら?」

「うん、あんたが白とか使うの珍しいなって」


友達は服も小物も黒とか多いだけに、彼女の絹糸を白色がまとめ上げるのは、言葉にできないくらい鮮烈な明暗。


「似合ってる、キレイだよ」

「……」


明後日のほうを向いてぷるぷるしている友達。


「わかった?こういうのよ?」

「貴方は本当にテクニシャンね!?」


-次回予告-

何でもできる天才肌


挿絵(By みてみん)

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