第107話 コツコツと時間をかけた結果
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「ごめんなさい」
休み時間に前の席の友達が急に頭を下げてきた。
なんで謝られたの私?
「友人関係とはいえ少し甘えすぎていたと思う」
「そ、そうなの?」
「ええ、親しき中にも礼儀あり。
大切だからちゃんとわきまえないといけないのに」
ほんとになんで謝られてるんだ?
「私はいまのところ何も被害を感じてないけど」
「バレないようにやったもの」
「貴様なにをやった?」
怖い怖い。
若干引き気味の私を置いてけぼりに、友達の勝手な謝罪会見が続く。
「ひとつなら可愛げがあるのに、私ったら調子に乗って全部やるなんて。
でも貴方が気が付かないのも悪いのよ?
私もどこかで止めてほしかったのかもしれないわ」
「もう一回言うけど、何やった?」
友達がピッと私の脚を指さす。
細くもなく、決っっっして太くもない脚。
「え?ほんとなに?」
理解できない友達が、さらに指で何かを何度も指す。
これは足ではなく……靴下のことを言ってる?
深い紺色で校章が刺繍されている学校指定の靴下。
購買で700円。
「それ私のよ」
「……ん?」
「貴方は5足持ってるわよね」
「お前勝手にタンスを開けたなという説教は後にするけど、持ってるよ?」
今度は友達が自分自身の足を指さす。
「これが貴方のソックス」
「……ん?」
「貴方の家にお邪魔するたびに、タンスの中のを1足ずつ私のものと交換していたの。
この間の訪問で完遂したわ」
「……ん?」
なんだかツムジあたりが痛い。
なんでこんなところが痛くなるかわからないけど、多分ストレス。
「つまり家のタンスにあるのも今履いてるのも、あんたの靴下ってこと?」
「ええ、そうよ」
「んーとね」
なんとか友達の思考を理解しようと考えてみるけど、無駄だわ。
「え?なんで入れ替えてんの?」
「貴方にバレないように手に入れたかったからに決まってるじゃない。
他に理由あるかしら」
「ないかな?ごめん」
なんで今謝ったんだろ。
私悪くないよね?
「こいつ頭イカレてんなとは理解してるけど、私の靴下なんて何に使ってるの?」
友達は問いに答えるように窓の外へ視線を向け、差し込んでいるお昼の日差しに僅かに瞳を細めている。
「私はお昼寝が好きなの」
「そうなんだ」
「愛用のアイマスクが古くなって新しいのが欲しくて」
「へ、へー」
「貴方の靴下をお昼寝の時に目の上に置いて日よけに使わせてもらっているわ。
他には観賞用だったり布教用だったり」
「ほ、ほーん」
「程よい重さと、香ばしさがいい感じよ?」
アイマスクと違って乗せてるだけなので、締め付けが無くて良いらしい。
嬉しそうに話してくれるけど理解ができないし、出来たら負けだと思うんだ。
あと香ばしくねえよ私の足は、たぶん。
「別にあんたとなら靴下交換くらい平気だけども」
「あら、喜んでもらえるなんて光栄ね」
「褒めても嬉しがってもいないからね?」
「なによ、同じ歯ブラシを買って入れ替えるのも考えたけどやめたのよ?
理性を褒めてほしいところよ」
「それやってたら本気で絶縁だったからな?」
「私たちにはまだ早いわよね」
「だね、その”まだ”は500年くらい先だろうけど」
-次回予告-
裏路地で抱きしめて
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