第105話 バレバレなトップシークレット
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「ねえ、そこのハッカーさん」
私は前の席の友達に話しかけた。
工学系が好きで自分でパソコン組み立てたり、アプリを制作している友達に。
「ハッカー行為なんてしたことないけれど何事かしら?」
振り返ってきたその横顔に呼吸一つ分だけ見惚れた。
「朝のニュースで、ハッカーに攻撃されて情報漏洩!
って言ってたけど、あれなんで漏洩なんかしちゃうのかなって」
「違法にデータを入手する手段は多すぎて説明が難しいから、一番簡単な方法でいいかしら?」
「うん、難しいの言われても理解できない」
幼稚園児でも理解できるので教えてほしいな。
「例えば貴方のそのスマホ、写真、メッセージアプリの履歴、SNSアカウント、どこに何時間いたとかの位置情報、そういったプライベート情報満載よね。
興味本位で見てみたいなって思ったらどうしたらいいと思う?」
「えーと、スマホを盗む?」
小さく首を振られた。
「ロックかけてるじゃない。
指紋や顔といった生体認証を突破するのは難しい。
もっと簡単なのがあるわ」
にこにことしている友達。
「新しいスマホを買ってきて、正しいIDとパスワードを入力すれば良いのよ。
データはクラウドにバックアップされているから取得できるわ。
本人に内緒で勝手に機種変更するの」
「そんなことできるの?」
「IDはメールアドレスよ。
いろんなアプリやポイントカードに書いたでしょ?
どこかから流出して出回ってるわよ、パスワードはアプリとスマホで同じの使ってない?」
「……使ってる」
「今朝のニュースの会社のサービスを利用していたら、一切ばれることなく貴方のクローンスマホが作れるわね」
愛着があったスマホがなんか急に気持ち悪く見えてきた。
後でパスワード変えとこ。
「要は特別なことなんてせずに、正しいIDとパスワードを使って正々堂々すればいいの。
この学校のサーバから情報を盗みたいなら同じね。
山田太郎さんって先生がいたらIDは何を想像する?」
「”yamada”とか?」
「そうね、”t.yamada”や”tarou.y”とかいくつかパターンも考えられるわ。
パスワードは生年月日をもじった”yamada19901129”とかありえそうね。
それらをいくつか試したらサーバーにログイン出来るかもね」
うあ、すっごくありそう。
私が不安そうな顔をしていたら、友達がごめんねと一言謝ってきた。
「脅しすぎたわ。
今はセキュリティも高くなってそこまでシンプルな話ではないわ」
「だ、だよねー。
だいたい学校から漏れる情報なんて大したものないしね!」
嫌な気持ちを切り替えるために、私はいつもより明るく笑う。
でも友達はそれに引っ張られることなく、いつもの無表情なまま。
「いえ、困るというか嫌なものがあるわよ?」
「え?住所とか?」
「それもだけど違うわ、身体測定のデータよ。
身長体重胸囲などなど」
……ん?
「この学校のパソコンには女子高生数百人の、入学から卒業までの発育データと”本名・住所・顔写真”がセットで保管されてるのよ?」
「え、いや、それはそうだけど、ん?」
確かに学生証用に写真を撮られた記憶が。
嫌すぎて脳みそが理解を拒んでる。
「学校が攻撃を受ければそれが世界中に公開されるわ。
私たちからしたら阿鼻叫喚ね」
「ひええええ」
さっきのスマホの数百倍は嫌かもしれない。
そんな私を友達がチラッと見てきた。
「データを手に入れたら、こいつ胸ばかりに栄養がいって身長も成績も伸びてないな。
とか妄想が捗るでしょうね」
おいマイフレンドよ、それは誰のことを言ってるのかな?
「そうだね、こいつ身長あるし胸ないし男が混じってる?
って勘違いされちゃうね」
「はっはっは、そういった女の子も世間では適度に需要があるのよ?
手取り足取り真夜中の保健体育で教えてあげましょうか?」
長身の友人が引きつりながら見下ろしてきてる。
「あんたにだけは身体データ見られたくないわ」
「見なくてもわかるわよ?」
「服の上からだけでそんなわけ……」
「わかるわよ?」
当り前じゃないという顔の友達。
嘘だよな?
「私と出会って1年半でサイズは2つ上がったわよね?
ウエストは頑張って維持してるようだけれど」
まてまてまて、なんで知ってる。
「サイズが変わって頻繁に下着を買い替えてるし大変よね」
その情報は服の上からじゃわからないよ?
「ふふふ、私なんて中学校のが普通に入るっていうのにね、こんちくしょう」
勝手にセルフで凹まないでほしい。
一応補足説明
※胸囲測定は1995年以降、やってもやらなくてもどちらでもいい項目になり、実施していない学校がほとんどです
-次回予告-
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