第101話 そんなの私に入れようとしないで
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「お帰りなさい……なんで凹んでいるのかしら?」
休みの日に私は前の席の友達とダラダラ遊んでた。
さっきお昼ご飯を作ってあげてふたりで食べたんだ。
美味しいって喜んでくれて嬉しかった。
「いや、歯磨きしてきたんだよ」
口の中が歯磨き粉で少しスースーしてる私。
「デンタルフロスもしたんだよ、あの長いひものやつ」
「清潔でいいと思うわよ?」
うん、口腔ケアって大切だもんね。
そう思いながら右顎をさする。
「口開けすぎてガコってなって違和感がすごい」
「ああ、なるほど」
奥歯の隙間に糸を通すときに大きな口を開けて、両手の指を数本ずつ口の奥に入れるんだ。
やりなれていていつも通りのつもりだったんだけど、やり過ぎて筋が伸びたというか、ちょっと痛い。
しゃべるのもおっくうで、もごもご話しちゃう。
「こう言う時って、冷やすんだっけ?
温めるんだっけ?」
私の言葉に友達が、大きく鼻を鳴らして呆れ果てた表情を浮かべた。
「はっ!貴方はそんなことも知らないの?
愚かもここまでくると憐れみを感じるわ!」
腕を組んで蔑んできた。
「……冷やすと良いんだね」
「正解」
冷たい言葉と冷たい視線か。
普通に教えろよ。
「というわけで、はい」
友達が私のほほを両手で包んできた。
ひんやりとして気持ちがいい。
「私の冷え性も役に立つことがあるのね」
さっきまでの怒り気味な演技はなくなり、いつもの仏頂面が少しだけ綻んでた。
細められた瞳が私を射抜く。
いやあのさ、確かに冷えるかもしれないけどさ、こんなことされたら。
「これは体が熱くなるから、逆効果だから」
私はその両手を赤くなった頬から遠ざけた。
性格がいかれてるのに、ところどころピュアなのなんなんだろう。
何かを悟った友達が両手をポンっとうって、指先を尖らせて突きつけてきた。
「中からも冷やさなきゃね。
口を開けなさい」
「何を勘違いしたらその答えにたどり着く?」
友達の手をじっと見る。
長くてしなやかな細い指だけど、こんなのどう考えても。
「そんなに大きいの入らないよ」
私の言葉に友達が、いままで見たことがないくらい瞳を大きく見開いていた。
「……今のセリフをもう一回言ってくれないかしら?」
「なんでスマホを出した?
なんでボイスレコーダを立ち上げた?」
まったくもうと私は立ち上がる。
これ以上付き合っていると顎のついでに胃まで痛くなって、おまけに頭が悪くなりそう。
付き合ってられん。
「ちょっと氷とってくる」
「良ければ私にもひとつ貰えないかしら?」
「なにかあったの?」
その問いに友達が尖ったままだった指先を誇らしげに見せてきた。
「しっかり冷やしてから突っ込もうかと」
「やらねえって言ってんだろ」
-次回予告-
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