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魔王は3LDKに住みたい  作者: 海鮮メロン
52/70

#52 ナイアの生きる道

城内 玉座の間


「失礼いたします!」

アグワスが前に進み、玉座から離れたところで跪いた。


王は比較的若く、動きやすそうな軽装で玉座に座っていた。

「…どうした、急いだ様子で」

アグワスに声をかける。


「早急にお話ししたいことがございまして、不躾ながら同行者と共に参りました」

少し離れた所にいたラング一行を確認し、入るように促した。


「…その者達は?…え?風の精霊様?」

王は姿を確認し驚いている。


「…はい、この者達は精霊様のお導きにより旅をしている。勇者一行でございます」

「ほお!そうか!訪ねてきてくれたのか」

「お初にお目にかかります。ソフィアと申します」

「ナイアです」

「ラングと申します」

三人は挨拶をした。


「私はこの国の王、トッドギースと申す。いや、勇者に会えて私は嬉しい」

「歓迎していただけるとは意外でした…。ありがとうございます」

「…あぁ!そういうことか。私はアーサー様とは縁もゆかりもない家系だからね。正直本家とか分家とかそういうのは私には関係無いのだ、ハッハッハ!」

トッドギースは高らかに笑っている。


「してアグワス、話とは?」

「先日からこの街で商いをしている漁師の事なのですが」

「どうかしたか?」


「僕から話すよ、良いかな?騎士団長アグワス」

「はっ!」



風の精霊が王に近付く

「水の精霊が困ってるようでね、ちょっと調べさせてほしいんだ。今、手が離せない状況になっているみたいだから、代わりに僕が来たんだ」

「調べるとは?」

「本当に漁師なのか、いや、本当に人間なのか。…とかね 」

「…人間ではない可能性が?」

「王はその魚食べた?」

「初めて来たときにあちらが渡してきた魚は食べたが、商いを許可してからは食べていない」


「なるほど。ラング」

「何だ?」

「氷魔法を使う魔族に心当たりは?」

「…単純に考えて水棲魔族系の誰かだろうな。無論、新たに呼び出されている魔族なら私にもわからない」

「そこなんだよね。サハギンって姿を変えられたっけ?」


ラングは少し考え

「人間の姿に変えるということならマーメイドやネーレウス等は確か時間制限はあるが足ヒレを二本足に変えられたはずだ、じゃないと戦えない場面も出てくるからな」

「ローレライは?僕も話でしか聞いたことはないけど」

「それこそ私もだ。古の存…在…!…その可能性が?」

「可能性の一つだけどね」


「待った。何だ?その古の存在というものは」

トッドギースは話に入り込む。


「今、大魔王ニールキースは私ですら記録でしか知らない魔族を次々と呼び寄せているみたいなんだ」

「私ですら?研究者か何かなのか?君は」


「トッドギース王、彼は魔王だよ」

「え!?魔王?」

王は驚き、周辺の兵士達もざわつく。


「冗談にして少し笑えないが」

「笑わそうとはしてないからね、事実だし」

「…本当なのか?」

王が右手を上げると兵士達は武器を構える。


「…トッドギース王、それは僕に対して刃を向けていると思っていいね?」

「な、なぜそうなる?」

「アグワスの話を聞いてなかった?彼は確かに精霊の導きで旅をしている一行と言っていたよ。僕はラングに勇者と共に世界を巡ってくれと頼んだ」

「勇者と魔王を?」

「あぁ、大魔王ニールキースが何を企んでいるのか知る必要がラングにはある。その結果どうするかは彼に任せてはいるが、今の時点で彼に刃を向けるということは僕達精霊を敵に回すということだ。その覚悟があるかい?」

「……降ろせ」

王の言葉と同時に兵士達は武器を下げる。


「…詳しく話を聞かせてもらえますか?」

「うん、いいよ」

風の精霊は今までの経緯を話した。



「…複雑すぎませんか?」

「そうかい?人間界と一緒で魔界も一枚岩ではないということさ」

「まぁ、それは理解できたが…」

トッドギースはラングを見る。


「…何だ?」

「いや…」

トッドギースは複雑な表情をしている。


「…まぁ、予想はしていた。そうですよね?ナイアさん」


「まぁね。だから別に信じないなら信じないでいいし、敵対するならそれはそれで構わないよ。ただしその場合は精霊様に会うのが終わってからにしてほしいけどね」

「敵対…。覚悟を持っておられるということか」


「私とソフィアは歴史に名が残るだろうね。英雄か逆賊か、もしくは全く別の形かもしれないね」

「…なぜそこまで?」

「アグワスは知っているが私はろくでもない人生を歩んできた。その出生ゆえにね」


「ナイア…」

アグワスは泣きそうな顔でナイアを見つめている。


「情けない顔するんじゃないよ!そんな私でもソフィアと出会えた、私の全てをこの子に教えるつもりだった。そしてラングさんとも出会った。今、私は楽しくて仕方がないのさ!その結果どんな事があっても私は悔いは無い。こんなに充実してる毎日はこの街では味わえなかった事さ」


「この街では…。あなた!もしかして宮廷魔術師としてこの城にいて、天才と呼ばれていた方では?」

「古い話さ。今の私は勇者、そして魔王の仲間さ」


「……クッククク、ハーッハッハッハ!」

アグワスはいきなり笑いだした。


「急にどうしたんだい!?ビックリするじゃないかい!」

「いや、すまんすまん。それでこそナイアだ」


アグワスは王を真っ直ぐ見つめ

「トッドギース王、一身上の都合により私は王国騎士団を辞めさせていただきます」

「!!…あんた、何を言ってるんだい!」

「ナイア、また一緒にいさせてくれ!連合軍か?俺もそこに入ろう!!」


「そうじゃなくて!王国騎士団の協力を得たいというのにあんたが辞めちまったら何にもならないじゃないかい!」

「…そっち?」

「そっち」

「えっ?俺の覚悟は?」

「早まる奴はいらないよ。本当に昔からあんたって奴は…」

ナイアは頭を抱えている。



「話が進んでいるところ悪いが、今アグワスを辞めさせるわけにはいかないよ」

トッドギースは数歩前に出る、


「…え!?」

「そりゃそうだろう。魚を販売している者達の正体を突き止め、然るべき行動を取れ。そこの者達と共にな。辞めるのはそれからだ」

「……ありがとうございます!!」


「魔王ラング」

「何だ?」

「すまないが君の行動を監視させてもらう」

「あぁ、構わない。誰が来るんだ?」

「…私だ」

「王、自らが?」

「あぁ、見定めさせてくれ」

「…わかった。気の済むまで一緒にいてくれ」

「あぁ、そうさせてもらう」

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