#47 ソフィアと光魔法
ロキは笑っている。
「ふふふ、鳥とピクシーが来たぐらいで何を強気になっているのです」
チマも笑う。
「仲間が来たら強気にもなるっす!」
「チマ、ソフィアさんは?」
「そ、それが吹き飛ばされてしまって。今ナイアさんが向かってます」
「わかりました。では私達の戦い方はやはり…」
「ラング様とソフィアさんを待つって事ね?」
「そうです」
森
ナイアはソフィアに必死に声をかけていた。
「ソフィア!!目を覚ますんだよ!ソフィア!!」
ソフィアは目を覚まさないばかりかあろうことか呼吸すらしていなかった。
『キュア』
ソフィアに何も変化は無かった。
「そんな、こんな…こんなところで」
ナイアは涙を流した。
ソフィアを抱きかかえ、木にもたれかけさせた。
「こんなことって…。こんな…ことって。死ぬならあたしの方が先じゃないかい…。ソフィア!!ソフィア!!」
「先生の声が聞こえる…。先生!どこにいるんですか?」
ソフィアは辺りが真っ白い空間でナイアを呼んだ。
「…ここはどこ?」
数歩歩いてみるも前に進んでいる感覚も無く、とても不思議な空間だった。
「勇者ソフィア」
「…誰?」
ソフィアは辺りを見回す。
「すみません、今はまだ姿を現せません。ですがどうしてもあなたと話がしたいと思いまして」
「……話を?」
「はい、酷な事を申しますがあなたは今、死にました」
「死…んだ?」
「はい、あのロキという者の攻撃とその後に受けた衝撃で」
「…じゃあここは天国?」
「いえ、まだあなたを天国に行かせるわけには参りません。かなり特例ですがあなたに力を与えることを考えています。ですがそれにはとても大きなリスクが…」
「…何ですか?」
「今のあなたでは体への負荷が大きすぎて、しばらく戦闘が出来ない状態になります」
「…今、状況はどうなっているのです?」
「今はチマ、クロ、キサがあなたと魔王ラングの到着を待つために命懸けで戦っています」
「…先生、先生は!?」
「あなたの肉体のそばで泣いています」
「……動けなくなっても構いません。私を仲間と共に戦わせてください!」
「…仲間、ですか。わかりました。ではまだ早いですが一時的に光魔法が使えるようにして差し上げましょう」
「光魔法…。では!あなたは!!」
「また会える時を楽しみに待ってます」
「ま、待ってください!」
ソフィアの視界は光で何も見えなくなった。
「ん、んん…」
「ソフィア?…ソフィア!!」
「先生?」
ソフィアの目が見えるようになると目の前に泣き顔のナイアがいた。
「よ、良かった。良かった…」
ナイアはソフィアを抱きしめ、大泣きした。
「…先生、女神様にお会いしました」
「め、女神様に?」
「正確には声だけですけど」
「一体何が?」
「あとで説明します。今はとりあえずチマの元へ。クロさんとキサも戦っているようです」
「…わかった!すぐに向かおうじゃないかい!」
二人は走った。
『風切り羽』
クロが羽ばたくと羽の形をした風の刃がロキに飛んでいく。
しかし全くダメージを与えることが出来ない。
「足止めぐらいにはなるでしょうか…」
「クロ!私達はチマのサポートに回らない?」
「サポートですか?」
「例えば…」
『クイック』
「あれ?何だか体が軽いっす」
チマの体が軽くなった。
「私だけじゃなくクロと交互にかければ、あの重装備のままでも今までと同じ戦い方が出来るんじゃない?」
「キサ…」
「ん?何?ダメ?」
「いえ、あなたとは良いコンビになれそうです」
『クイック』
クロもチマに対して魔法を唱えた。
「…へへー、嬉しいな。クロが褒めてくれるなんて」
「これからもよろしくお願いします」
「ちょっと!!何を良い雰囲気になってるんすか!!」
チマはロキの攻撃を避けながら怒っていた。
「…失礼、私としたことが」
「チマ!ごめん」
「私が死んだら呪ってやるっす…」
「そういうあなたも余所見やおしゃべりが過ぎますねぇ」
ロキはチマに魔法を連発していたが当たってはいなかった。
「避けることに専念すればどうということはないっすからね」
「……なるほど、では攻撃を変えますかね」
ロキは数秒念じた後、右手から剣を出した。
それは紫色に光っていた。
「それって…。まさか」
「なんで魔王の剣が…」
「おや、あなた方はこれを魔王の剣と呼んでいるのですか?……では私もそう呼ぶことに…」
ロキはチマに剣を向け
「しますかね!!」
一気に加速して近づいていった。
ロキは剣を振るがチマは後ろに飛んで避けた。
「…遅い!!」
だが、チマが着地する前に間合いを詰めてきた。
「…あっ、死んだっす」
チマは斬られる事を覚悟した。
『ホーリー』
ロキの頭上に光の輪が現れ、そこからいくつもの光の球が降り注いだ。
「ぐわぁ!こ、これは…」
チマは声が聞こえた方向を見た。ソフィアとナイアが走ってきていた。
「ソフィアさん!!無事だったんすね!!」
「…チマ、大丈夫?」
「大丈夫っす!助かったっす!」
「ここは任せて…」
「…?」
チマはソフィアの様子がおかしいことに気が付いた。先程までとは感じる印象が違い、何故かその場から逃げたくなるような圧を感じていた。
「チマ!こちらへ。クロさんとキサも!巻き添えを食らうかもしれんよ!」
「…やはり!二人とも急ぎますよ!」
クロは気が付き、急ぎナイアの元に向かった。チマとキサも続いた。
「ナイアさん、もしかしてソフィアさんは…」
「光魔法が使えるみたいです。魔族が食らったらひとたまりもないでしょう」
「急にですか?何があったんですか?」
「その話はここを切り抜けてからしますね、まずは」
ナイアはソフィアを見た。
「先程、私が飛ばした方ですねぇ。無事だったとは…。それに何ですか?今の魔法は」
「……」
ソフィアは何も答えなかった。そればかりか
『ホーリー』
再度、光魔法を唱えた。
「ちっ!!」
ロキは後ろに飛び、ソフィアとの間隔を大きく空けた。
しかし光の輪はロキの頭上にあるままだった。
「まさか、私に当たるまで…」
光の球が降り注ぐ、今度は球も大きく数も多かった。
「…さっきは私がいたから加減したんすね」
「そういう調節も出来るのですね…。それにしても何という力でしょうか」
チマとクロは今のソフィアに恐怖を感じるようになっていた。
ロキは咄嗟に障壁を展開していたが、大きなダメージを受けていた。
「…さ、先程受けたのとは威力がまるで違い…ますね」
ロキは苦しそうだ。
「ここまでの力を持っていたとは…。私としたことがあなたを甘く見ていたようだ」
ロキは後方に手をかざした。
「…今回は帰らせていただきましょう。さすがにこの魔法は受け続けたらまずい」
ロキの後方にゲートが現れ、徐々に姿が飲み込まれていった。
『ライトブレード』
光の刃がいくつかソフィアの周りに現れ、ロキに飛んでいった。
「…まずい!!」
ロキはすぐにゲートに入っていったが
「ぎゃあ…!!」
もう姿は見えないがどうやらダメージはあったようだ。
ゲートが閉まった。
「…も、もう大丈夫っすかね?」
「多分大丈夫でしょう」
ソフィアは振り返りニコッと笑ったあと、その場に倒れた。
「ソフィア!!」
ナイアがすぐにソフィアの元に走っていった。
「クロ!はぁはぁ…何があった!!」
ラングが到着した。どうやら走ってきたようだ。
「…走ってきたのですか?」
「そ、そうだが…。」
「魔法で帰れるのに?」
「……あっ」
「……」
クロは冷たい視線をラングに向けている。
「ソフィアさん!?ソフィアさんが倒れているじゃないか!」
「あっ、今そういうのいいっす…」
「ちょっとうるさいから黙ってて」
「魔法で帰るという発想が無かったんですね。残念な魔王ですね」
ラングは三人から辛辣な言葉を受けた。
「何があった?あと酷くないか?」
「ソフィアさんを拠点に運びましょう」
「うん、魔法で浮かせられるし」
「力なら任せてくださいっす!」
三人はソフィアの元へ駆けていった。
「…無視された?説明してくれって!」
ラングは一気に淋しくなった。




