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魔王は3LDKに住みたい  作者: 海鮮メロン
46/70

#46 チマ、覚醒

拠点


ナイアは忙しそうに何かを準備していた。

「…先生?どうしたんですか?」

「旅の準備に決まっているだろ」

「え?どこか出掛けられるのですか?」

「…何を言ってるんだい?火の精霊様の所に行く準備だよ」

「いや、まだ行かないですけど…」

「今すぐ行かないというのは知っているよ。行くときの為の準備だよ」

「…あぁ!楽しみで仕方ないんですね」

「な、何がだい?」

「いや、だから精霊様に会いに行くのが」

「違うよ。あんたの為に色々準備をしているんじゃないかい」

「…ありがとうございます」

「よいよい」

ナイアは嬉しそうにアイテムを大きなカバンに詰めていた。


「いや、そんなに使わないですって」

「火の精霊様は火山にいるんだろう?使わないかどうかは現地でわかることだ」

「はぁ…」

「何やら言いたげだね?」

「楽しみなんですよね?」

「だから何がだい」

「資質を解放してもらうのが」

「な、ななな何を言ってるんだい。全くこの子はおかしな事を言うもんだねぇ」

「風の精霊様から言われましたもんね、強い炎の魔術師になれるって…」

「最強の炎の魔術師だよ!あっ…」

ナイアは口を手で塞いだ。


「やっぱりそうなんじゃないですか!」

「何だい!悪いのかい!?」

「素直になれないなら悪いです」

「…言うようになったじゃないか。そうだよ、楽しみだよ。何せ風も土も私は何も貰ってないんだからね?」

「…はい」

「それなのに皆して練習だ訓練だ、新しい力を試したりして…」

「…淋しかったんですね?」

「…もう隠居かな。とも思ったよ」

「そこまでですか!?ちょっと飛躍しすぎですって!」

「でもそんなものとはおさらばできる機会が来るってもんさ!そりゃ嬉しいに決まっているだろう」


「そうですね…」

ソフィアは少し引いていた。


ナイアはカバンの中を整理して更にアイテムを入れようとした。

「そういえばソフィア、何か用事があって来たんじゃないのかい?」

「はい、今の会話の後で申し訳ないですがもう一度魔法を教えていただこうかと…」

「…昔やったようにかい?」

「はい、あの頃とは違うから今やったら別の形になるのではないかとラングさんから言われまして…」

「…確かにそうだねぇ、ってあの頃教えたようにもう一度やってみたかい?」

「やってはみたのですがどうやら今度は強すぎるようで制御の仕方を教えていただきたいと」

「おや驚いた。そこまで魔力が上がったのかい、…私も期待してしまうねぇ。赤いローブを買った方がいいかもね」

「赤いローブ?」

「ほら!なんたって最強の…。何でもないよ」

「炎をイメージした赤いローブを着て戦いたいんですね」

「はっきりと言うんじゃないよ」

「…すみません」


「それで制御だったね…。こればかりは練習あるのみだからねぇ…」

「チマも今、一生懸命練習しています。私が何か出来ればアドバイスも出来るとは思ったのですが…」

「ん?それだよ!」

「な、何ですか?」

「チマは今どこにいる?」

「拠点の裏にいますよ」

「…よし!私らも行くよ」

ナイアはそう言うと足早に出ていってしまった。

「ちょっ、ちょっと待ってください!」

ソフィアは追いかけた。



「硬くするイメージ…硬くするイメージ…」

チマは理想の形をイメージし、それを言葉にしていた。

「…はぁっ!!うがぁ!!」

失敗した。またもやチマの拳が重くなりすぎて地面についてしまった。

「痛たた…、これ肩が痛いっす……」


「キュア」

ナイアが後ろから回復魔法をかけた。

「おっ?おお!?痛みが消えたっす!ありがとうございます!!」

「チマ、頑張っているようだね」

「全く出来ないので正直辛いっす……」

「ソフィア!おいで!」

「来てますよ」

ソフィアはすぐ後ろにいた。


「今からチマと戦いなさい。本気で」

「えっ?な、何を言ってるんですか?」

「…本気でっすか?」

二人は驚いた顔をしている。


「荒療治かもしれんが実戦でこそ出来る事もある」

「…まぁ、それはわかりますが」

「大丈夫、怪我してもさっきみたいに治すから」

「治してもらえるなら私は良いっすけど…、でも…」

「強くなりたくないのかい!?ラングさんの力になるんだろう!」

「は!はいっす!!」

「なら四の五の言わずに戦うんだよ!!」

「…昔に戻った」

ソフィアが魔法を習い始めた頃、ナイアは凄く厳しかった。それこそソフィアは毎日泣いていたぐらいだった。

しかし言っていることは至極真っ当で反論の余地も無かったため、ソフィアは信頼してナイアに師事していた。


「チマ、やりましょう」

「ソフィアさん…、わかったっす!」

「そうそう、魔法しか使っちゃいけないよ。そのための戦いなんだから」

「わかりました」

「うっす!!」


ナイアはその場から少し離れ、ソフィアとチマも二人の間を空けた。



「心の準備はいいね?……始め!!」


二人は念じ始めた。


「ウィンドカッター!!」

ソフィアが唱えると小さな風の刃が出たあと、すぐに地面に落ちた。

「あ、あれ?」


「…はぁっ!!うがぁ!!」

チマはまた地面に拳がついた。


泥仕合だった…。


「ソフィア…制御出来ないってそっちの意味なのかい?」

「い!いえ!さっきはいくつか一気に出てしまったのですが…」

「……どうしたもんか」

ナイアは頭を抱えた。



「随分と雑魚が揃っているんだな。こりゃ期待外れかな」

聞き慣れない声が三人に聞こえた。


「誰!?」

「…お初にお目にかかります。私はロキ。大魔王ニールキース様にお仕えする者です」

「…ニールキースに?」


「ちょっと待つっす!お前なんか知らない!!」

「……おや?人間の姿をしていますがあなたは魔族ですね?」

「私はコボルド族次期族長チマ!お前は誰だ!!」

「チ、チマ?知らないの?」

「あんな奴、魔界では見たこと無いっす!」


「それはそうでしょう。なんせラングという者が人間界に行ってから私は仕えた。いえ、正確には呼び出された」

「呼び…?出された?」

「はい、私はとっくのとうにこの命を無くしていたんですがね、ニールキース様の力でまたこうして生を受けることが出来ました」

「…ラングという者?魔王をそんな呼び方するの?」

「……まぁ、今は話さないでおきましょう」

ロキは薄ら笑った。


ソフィアは恐怖を感じとり

「チマ!ラングさんは?」

「今は鍛冶屋に行ってるはずっす!」

「連絡方法は?」

「クロさんがいないとどうにも…」

「ならこの三人でやるしかないのね」

ソフィアは剣を抜き構えた。


「おやおや、私はそんなつもりで来たわけではないのですがね。そんな態度を取られたら仕方ない…」

ロキは指を弾く動作をした。


「ぐぁ!!」

ソフィアは後方に吹き飛んでいった。

「…っ!!な、何を!!」

ナイアはチマの隣に立ち、杖を構えた。


「何をも何も魔法を唱えただけですよ?あなた方も使えるのでしょう?」


ナイアは戦慄した。

「詠唱も無しにただ指を弾いただけでこの威力かい……」


「しかし、ラングと勇者が共に行動してるのは本当みたいですねぇ…」

「…それを確認に来たのかい?」

「えぇ、何やら不穏な行動を取っているとニールキース様がおっしゃったのでね」

「あんたみたいな力を持ったのがニールキースに仕えてる?あんたなら今すぐ魔界を支配出来るんじゃないかい?」

「私はそんな面倒臭いことは嫌いなのですよ。ただ人間を殺せればそれでいい」

ロキはまた笑った。


「こりゃ…まずいねぇ…」

「ナイアさん、ここは私が!ソフィアさんを!!」

チマが数歩前に出てファイティングポーズを取った。


「チマ!おやめなさい!」

「これ以外に方法は無いっす!!早く!!」

「…!!」

ナイアはソフィアが吹き飛んでいった方向に走った。


「魔法もろくに扱えない魔族が一人で私と?…ハハハハハ!!私も低く見られたものだ。腹が立ちますねぇ」

「うぅ、…ここまでっすかね。ラング様ごめんなさい」

「おや?もう諦めてますか?よろしくないですねぇ」

「何がっすか?」

「命を諦めた生物を殺すことほどつまらないものはありません。せめて抗っていただかないと」

「諦めてるように見えるっすか?」

チマは強がったが足は震えていた。


「…あなたはつまらない」

ロキは指を弾いた。


瞬間、チマの頭の中に言葉が浮かんだ。

「…っ!エンチャント!!フルアーマード!!」

チマの体を光が包み、ロキの魔法を弾いた。


「…何ですか?それは」

「…何なんすか?これ」

「私が聞いているのです」

「…さぁ?」

チマに金属製の鎧のようなものが全身に装着されていた。


「…そうですか、極限状態からの覚醒。といったところでしょうか」

「…あ!さっきナイアさんが言ってたのってこれなのかな?」

チマは全身をくまなく見ている。

「でも、重いっすねぇ…」


「バカなことを言う、ムカつきますので本気で殺しますね」

ロキは宙に浮きチマに飛んでいった。


「まずい!!」

チマは死を覚悟した。


『風切り羽』

『ウインドカッター』


ロキに二種類の風魔法が当たり、その場で止まった。

「…誰ですか?ダメージは無いですが腹が立ちます」


チマは魔法が飛んできた方角を見た。

「クロさん!キサ!」


クロとキサがチマの元に降り立つ。

「大丈夫ですか?チマさん」

「…これ、スゴくない?重装備」

「なんか今までの戦い方が出来そうにもないんすよねぇ…ってそんなことよりこいつっす!」

「…あなた、誰ですか?」

「私は…、いえ面倒臭いので言うのはやめます、どうせここで死ぬのですから意味がないでしょう?」


「クロさん、ラング様は?」

「たった今テレパスを送りました。それまで耐えましょう」


「それじゃあ!」

「うん!」

「いきましょうか」

三人は臨戦態勢を取った。

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