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魔王は3LDKに住みたい  作者: 海鮮メロン
44/70

#44 技と魔法とガールズトーク

「やぁ!はっ!」

「ソフィアさん、そんなものじゃ私に傷はつけられませんよ」


拠点に戻った一行は一晩休み、翌日の朝からラングとソフィアで実践形式の稽古をしていた。


「…はぁはぁ、当たらない」

「まだまだですね。休憩にしましょう」

「はい…」

ソフィアは落ち込み座り込んだ。


「…ラングさん」

「何でしょう」

「私に足りないものは何ですか?」

「…あえて言うなら意外性ですかね」

「意外性?」

「剣が正直すぎるのです。なのでこちらも予測しやすく避けやすい」

「正直すぎる…。確かに稽古でしか剣を振ってこなかったから」

「例えばチマなんかも読みやすいぐらいだとは思うのですが、それを補うほどの速さと力がある」

「確かに力があれば防御されてもある程度ダメージは与えられますし、速さがあれば避けられそうになっても対応出来ますね」

「失礼ながら今のソフィアさんは実に平均的だ。何かに特化しているわけではない」

「…はい」

「そろそろ魔法の訓練が必要なんじゃないですか?」

「魔法…」

「剣だけでなく魔法も織り込んで攻めるのです。もしくはチマのように強化するか」

「そうですね。苦手なんて言ってられませんよね」

「はい、これからどんなはぐれ魔族がいるかわかりませんし、必ず私がいるとも限らない」

「…確かに。でもどうすれば魔法が上達するのか」

「……ナイアさんから教わってたのではありませんか?そう聞いてますけど」

「そうなんですが…」

「その時はまだ資質が解放されていなかった。今なら上達するのではないですか?」

「…やってみます」

「それでは今日はこの辺りで」

「はい、ありがとうございました」


ラングは拠点の部屋に戻った。

「ラング様、なぜソフィアさんの稽古にあんなに力を入れているのですか?」

「ん?強くなってもらった方がいいだろ」

「ですが敵になるのかもしれないのですよ?」

「私が更にこの上を行けばいいだけの事だ。それともこのままでは私が負けそうだとでも?」

「いえ、滅相もございません。失礼しました」

「いや、よい。ところでクロは風の創作魔法は考えているのか?」

「はい、飛べる利点を活かして私の周りに風の刃を纏う魔法を考えました。私が横を飛ぶだけで敵を切ります」

「……そ、そうか。いいんじゃないか?」

「…何か引っ掛かりますね。ダメならダメと言ってください。ソフィアさんにはあんなにきつく言ったのですから」

「…わかった。じゃあ言うぞ?クロの体の大きさだろ?よっぽどの大きさの刃にしないとただのかすり傷だぞ。それなら翼から更に大きな翼状の風の刃を付けた方が致命傷を与えられるのではないか?」


「…!!」

クロはビックリした顔をしている。

「すまんがその表情はどんな感情だ?」

「ラング様のおっしゃった方が理にかなっていて、あっ、頭良かったんだ。って思ってます」

「久々にバカにしてきたな?」

「滅相もございません!あっ、頭良かったんですね。と脱帽です」

「…怒ろうかな?」

「ソフィアさんが戻ってきましたよ。それでは私はこれで」

「おい!待て!」

クロは窓から飛んでいってしまった。


「しかもソフィアさんいないし…。あいつそろそろ本気で怒ろう…」

ラングは決意した。




それからしばらくした後、ソフィアとナイア、そしてチマが訓練をしていた。

チマは拳を硬くする魔法を効率よくつけたり消したりしたいと考えていた。

「…チマ、それならずっと硬くしていればいいんじゃない?」

「それだとダメなんす。私の攻撃はガードされやすいのでそれを逆手に取りたいんす」

「逆手に?」

「はい!例えば同じモーションの攻撃でも重さが違えばガードはどうなりますか?」

「…一発目が普通で二発目が重かったら崩れる可能性が上がるわね」

「そういう事っす!!」

「ちょっと待って!それをやろうと言うの?どれだけの鍛練が必要か…」

「どれだけ必要だろうと私はやるんです。ラング様の為ですから」

チマはニッコリ笑った。


「…こんなこと聞いていいのかわからないけど、なぜそこまで?単純な主従関係とは思えないわ」

「………お二人も御存じかもしれませんが、コボルド族は魔族のヒエラルキーで言ったら下の方なんです。だから私が産まれてから今まで他の魔族が優遇されたり、逆に私たちが損をしたりと色んな目にあってきました」

「魔界にもそんなのがあるんだねぇ」

「でもラング様は違いました。初めてお会いした時に私の目を見てよろしく頼むとおっしゃってくださいました。もうそんな事初めてで…。この人は他の魔族とは違う。ニールキース様とも違う。私は一生かけてラング様についていこうと決めたっす!!」

「それまでとても辛かったのね」

「…多分キサもそうだと思うっす。だからキサがラング様についていこうとする気持ちは凄くわかるんす」

「ピクシーもそんな扱いなのかい?」


「…ちょっとー、あたしのいないところであたしの話?」

キサが三人の元に現れた。

「キサ、聞いてたっすか?」

「聞いてたよー。あたしもラング様に一生ついていくよ!あたしみたいなのにもありがとうとかすまないとか危険な目にあわせられないとか、そんな事はニールキース様は言わないもの、他の側近もね。ラング様はその辺の魔族とは違うわ。絶対に今の魔界を変える人よ。だからあたしは出来る限り力になるつもり、いざとなったらこの命にかえても!」

「…そ、そんなにまで?」

ソフィアはラングの人徳というかそういったものを改めて再認識した。


「確かに私達にも優しいしねぇ、ラングさんが魔王じゃなかったらとっくに誘惑してるねぇ」

ナイアがとんでもないことを言い出した。


「先生!何を言い出すんですか!」

「おや、ソフィアもそう思わないかい?その辺の魔族ならとっくに私らは攻撃されているよ。そればかりかあんたを育てるような事までしてるじゃないかい。私でもラングさんがその辺の魔族とは違うことはわかるよ」

「ま、まぁ確かに初めの印象は少し悪かったですが段々とラングさんの良さがわかってきたというか、何というか…」

「……ふーん」

ナイアはニヤニヤ見ている。

「な、何ですか!!ほら訓練再開しましょう!」

「ソフィアさんなら私もいいんすけどね」

「あたしもー」

チマとキサも追い討ちをかけた。


「な、ななななな何を!何がですか!!」

ソフィアは耳を赤くして離れてしまった。


「おやおやソフィアにはまだ早かったかねぇ?」

「…面白くなってきたー」

「ムッフッフ」

残った三人は不敵な笑みを浮かべていた。

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