#42 いただきます
ラングとナイアはテーブルの椅子に座り、ラングの後ろにコボルド部隊、横の椅子の背もたれにはクロが止まっていた。
「ラングさん、一つの仮定としてお聞きいただきたいのですが」
「はい、何でしょうか」
「その前に一つ、魔石は魔界にはどのぐらいあるのですか?」
「魔石は天然物と人工物がありまして、持つ力の強さが違います。天然物はやはり数が限られてますが人工物となるとニールキースならいくらでも作り出すことが出来ます」
「そうですか、それでしたら仮定は成立するかもしれません」
「それはどういうことですか?」
「魔石を体内に埋め込むと能力が上がる。もしそれが今魔界にいる全魔族に埋め込まれたら……」
「魔界の戦力は大幅に上がり、先の戦争のような敗北は無くなるでしょう。……まさか、その為の実験をはぐれ魔族でしていたと?」
「はい、少なからずはぐれ魔族は何かしら本来持たない能力を持っている。今人間界にいるはぐれ魔族は身体が朽ちずに生き残り、能力を手にした者達。しかし今後も何も起こらない保証は無い。だから魔界には帰らせずに人間界に置いていった…」
「ではそのリスクを安定させるための実験台がはぐれ魔族で、次の戦争の為に全魔族に埋め込むよう考えていると?」
「あながち大外れでは無いとは思うのですが」
「ラング様、可能性は高いと思います」
「クロ?何か知っているのか?」
「申し訳ありません。やはり早くに言うべきでした。ニールキース様が魔石を埋め込めこんでいる所を目撃したことがございます。ですがニールキース様から口止めをされ恐怖もあり言えませんでした」
「……そうか!だからルードの時にあんな態度になったのか」
「重ね重ね申し訳ありません」
「いや、よい。気持ちはわかる。しかしだとすると父上は魔族の事を何だと思っているのだ。それではまるでただの駒ではないか」
「恐れながらそういう認識なのではないかと思います」
ラングはクロの事を睨んだが
「いや、すまない。そう思って然るべきか…」
クロの意見を受け入れた。
「ですがやはりこれは私が考えた仮定です。やはり精霊様から聞かないとはっきりとはわかりませんね」
「そうですね、ただある程度の予想としては持っておいた方が話は聞きやすいとは思うので、今後も何か気付いたことや思うところがあれば何でも言ってください」
「ありがとうございます、それではそうさせていただきます」
「恐れながらラング様、私からもよろしいですか?」
バラガスが後ろから話しかけた。
「どうした?何かあったのか?」
「いえ、事案というわけではないのですが、是非ともチマ様をラング様に同行させてはいただけないでしょうか?」
「チマを?」
「はい、先程修復しているときにとても羨ましがっておられて……、拠点の守りは我ら三人が命懸けで行いますのでどうかお願いできませんか?」
「…まぁ姿も変えているし、それが三人の総意なら私には断る理由は無いな」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「わかった。じゃあ留守は頼むぞ?」
「はい!お任せくださいませ」
「出来ましたよ」
ソフィアとチマが料理を持ってきた。
「おお!ありがとうございます!」
「簡単な物なので豪華さには欠けますけど…」
テーブルに運ばれてきたのはそれこそ酒場でおつまみとして出るような料理であった。
「いえいえ、どれも美味しそうで。どれどれ」
「ラングさん!何してるんですか!!」
ラングは手を出そうとするとソフィアから注意された。
「えっ?な、何とは?」
「今、手で食べようとしました?」
「はい、そういうものでしょ?」
「確かにそうやって食べる料理もありますが、今日はこれを使ってください」
ソフィアは先の方が分かれていて尖っている金属製の物をラングに渡した。
「こ、これは…」
「フォークという物です。これで食べ物を刺して食べてください。今後は人間界のやり方でやらないと奇異に見られてしまって動きづらくなりますからね」
「確かに…。いや教えていただいて感謝します」
「それと食べる前はいただきますと言ってください」
「いただきます?」
「そう、この料理は元々命ある生き物達を使っています。弱肉強食、そういってしまえばそうなのですが、ただこの生き物達の命をありがたくいただいて私達の血肉とする。という感謝の意味を込めてそう言います」
「…なるほど、人間の慈しみはそういうところから来ているのですね。わかりました。それでは、いただきます」
「いただきます」
ラングが言ったあとに一同続けて言い食事を始めた。
ラングは一口食べたらもう止まらず一心不乱に食べ続けた。




