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魔王は3LDKに住みたい  作者: 海鮮メロン
40/70

#40 旅路は砂漠へ

広大に広がる砂漠地帯。

気温はとても暑く、気を抜いたら意識が飛んでしまいそうなほど過酷な地域である。

その砂漠を歩くラングとソフィア、ナイアの三人はろくに口を聞けないほど疲弊していた。


「ソ、ソフィアさん。大丈夫ですか?」

「え、えぇ、何とか…。先生、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ……ただ、あと数分したら死ぬのかもねぇ…」

「ナイアさん、気を確かに……」


三人が何故砂漠を歩いているか、勇者アーサーの冒険の記録によると土の精霊は砂漠地帯にあるオアシスから通じている地下洞窟にいたと示されていた。

精霊に会いにいくという旅を始めた一行はその砂漠地帯でオアシスを探していた。


「ラング様!」

クロがラングの元に飛んできた。空を飛べるクロは先行しオアシスを探していた。


「クロ…見つかったか?」

「いえ、かなり先まで見てきましたがオアシスどころか木の一本もありませんでした」

「ハァー!無いか。ソフィアさん本当にここにあるのですか?」

「アーサー様の記録書を読む限りはここなのですが……」

「他には何か書いていませんか?」

「ちょ、ちょっと待ってください」

ソフィアはカバンからアーサーの冒険の記録を取り出した。


土の精霊に会う前の部分をもう一度よく読み返してみることにした。


「あっ…」

「何ですか?嫌な予感がする言い方ですが」

「アーサー様がここに来たのは夜となっています…近くの街で魔族討伐の依頼を受け、それをこなしてから出発したため、砂漠に着いたときには夜になっていたと…」

「ソフィア!それを早く言わないかい!」

「じゃ、じゃあ、たまたま偶然夜に来たら見つけたというわけですか?それとも夜になると目に見えて何かしらの変化が起きているとか」

「そ、そうかもしれません…ごめんなさい!」

ラングは怒りたかったが暑さでそれどころではなかった。


「いや、いいですよ。確かにそれだけでは夜が関係しているとは限りませんから。なので一旦拠点に帰って夜まで待ちましょう。それでまた砂漠に来る前に寄った街から出発すればいい」


ザリドとの戦いのあと拠点に戻った一行はまず寝泊まり出来るように直すことにした。

都合良く魔法で建築。という便利な魔法が無いためそういうわけにはいかず丸一日かけてとりあえず休めるようには修復出来た。

今現在はチマ達コボルド部隊とピクシーのキサが更なる建築を行っている最中だ。


ラングは魔王の剣を差している反対側の腰にある魔法の杖を持った。

鍛冶屋のアキリスが造り上げた渾身の杖。ラングの要望通りに魔力を使わずとも中級程度の魔法なら使えるようになっていた。

杖に埋め込まれた魔法石は装備するものの魔力に呼応しその者の魔力が高ければ高いほど強力な魔法が使える優れものであった。


ラングは行き先を念じた。

「テレポート」

一行は光に包まれ姿が消えた。


姿を現したのは拠点の入り口前だった。

外には風の魔法で木材を切っているキサがいた。

「あっ!おかえりなさい!」

ラングの元に飛んできた。

「早かったわね、もう会えたの?」

「いや、会えなかった。しかしどうやら夜になれば何かあるみたいで一度帰ってきたんだ」

「そうなんだ。とりあえず中入ってみてよ。出発した時より立派になってるわ!」

「そうか、ありがとう。じゃあ入るか」

中に入ったラングは驚いた。しっかりと家のような造りになっていた。

「ほう、これは…中々良いではないか」

「でしょ?」

キサはエヘンと満足気な顔をした。


奥には階段が作られておりどうやら二階建てになっているようだった。

会話が聞こえたためチマが階段の所に現れた。

「あっ!ラング様!おかえりなさいっす」

チマが階段を降りるとその後ろにコボルド部隊の三人もついてきた。


ラングの前に立つと跪き、報告をした。

「拠点はあと一部屋で完成いたします。今の時点でいかがでしょうか」

チマはちゃんとした言葉遣いに戻し、ラングに問うた。

「うん、良いではないか。気に入った。よく頑張ったな、ありがとう」

「ありがとうございます。お褒めいただき光栄です」


チマは立ち上がり

「さっ、ラング様。こっちに来てもらいたいっす」

いつもの言葉遣いに戻った。

チマがラングを連れていったのはキッチンだった。


「ここは?何をするところだ?」

「人間はこういう所が家に必ずあってここで料理をするみたいなんす」

「料理?ということはここで美味しいものが作れるということか!?」

「そうっす!!」

「でかしたぞ!チマ」

「ありがとうございます!」

「ところで…何をどうすればいいのだ?」

「えっ?何をどうする……とは?」

「いや、何を使えば料理というものが出来るのだ?」

「……わからないっす」

「そこが重要じゃないか」

「す、すみませんっす!」

そのやり取りを見ていたソフィアとナイアがキッチンに入ってきた。

「必要な道具と材料は用意しましょうか?何なら今日は作ってあげますよ?」


ラングは両手でソフィアの手を握り

「い、いいんですか!?なんて素敵な人なんだ!」

「ちょっ、ちょっと大袈裟ですよ」

「ソフィアは元々酒場の娘だからね、料理の腕は保証するよ」

「おお!是非!是非よろしくお願いします!」

「わ、わかりました、わかりましたから。ちょっと手が痛いです」

「あっ!これは失礼…」

ラングは手を離した。

「それじゃ行ってきますね。先生、キオールまでお願い出来ますか?」

「そうだね、あの街ももうだいぶ元に戻ってきてるだろうしね」

リザードマンからの襲撃を受けて商業に打撃を受けていた都市キオールもザリドを退治したことによって徐々に活気を取り戻していた。

「それじゃラングさん、ひとっ飛び行ってきますね」

「はい、よろしくお願いします」

ラングは笑顔で一礼した。



商業都市キオール


ソフィアとナイアは料理のための道具と食材を探すため街を歩いていた。

「先生、私ちょっとラングさんがわからなくなってきました。あの人、魔王なんですよね」

「確かに想像してた魔王とは違うみたいだねぇ。まぁ、いざというときの圧はさすがといったところだけどね」

「料理作りましょうか?ってだけであんなに喜ぶなんて…」

「目的は美味しいものを食べることだって言ってたのは本当だったんだねぇ、あの時は信じられなかったけど」

ザリドを倒したあとにラングから話を聞いていたときナイアは顔をしかめる部分があった。

ラングの言う目的が荒唐無稽というか人間界に魔王が来る目的とは信じられなかったためだった。

しかし先程の喜びようを見る限りではそれは正しかったんだと信じるようになった。


「中々に良い人みたいだしねぇ」

「いえいえ、魔王ですよ?全部策略かもしれません」

「おや?いつの間にか深く考えるようになったんだね」

「ひどくないですか?先生……」

「アッハッハ、でもソフィアは今はそれでいいと思うよ。あまりにも情がわいてしまうといざという時に戦いづらいだろうからね」

「……ですね」

今は共に行動しているが真実、つまりニールキースの目的を知ったあとラングがどう出るかは今はわからなかった。

ソフィアは変わらず警戒を続けようと思った。


「まっ、とにもかくにも今は美味しいものを食べさせてやりたいねぇ、少なからず今は仲間なんだから」

「…そうですね」

ソフィアは先程のラングの笑顔を思い出した。

思わずフフッと笑ってしまったがナイアにそれを見られ、すぐに真面目な顔に戻した。


数分歩いた所に以前立ち寄った武器屋があったためここに何か売っていないかと店に入った。

「いらっしゃ…あっ、あなた達は!」

以前にもいた店員が二人に寄ってきた。

「あなた達がはぐれ魔族を倒してくれたんですよね?」

「そうだよ、商品は充実するようになったかい?」

「はい、おかげさまで!ところで今日はどのようなご用件で?」

「いや、包丁とフライパンがあるか見に来たんだが」

「包丁とフライパン、ですか?何でまた」

「旅の拠点に置きたくてね」

「なるほど、そういうことでしたか。少々お待ち下さい」

店員がフロアの隅に向かっていくと、包丁とフライパンを手に戻ってきた。

「こちらは二つともうちで扱っている中でも上級な物です」

「い、いやそんなに良いものではなくていいんだけどね」

ナイアは少し戸惑った。


「いえ!こちらは是非持っていってください!お礼としては少し心許ないかもしれませんが、あなた方はこの街の恩人です。どうかお持ちください」

「いえいえ、そんな悪いですよ」

ソフィアは恐縮した。


「いえ!お持ちください」

「しかし…」

「ソフィア、いただいていこう」

「はい!是非!どうぞ」

「……わかりました。それではありがたく頂戴します」

ソフィアは包丁とフライパンを手にいれた。


「そうそう、この街に市場はあるかい?」

「それでしたら店の前の道を進んでいただくとございます」

「わかった。ありがとう」

二人は店員とお互いに何回か頭を下げたのち、店を出た。


武器屋の店員に教えられた通りに道を進むと活気溢れる市場に着いた。

「ソフィア、任せるよ」

「はい、先生」

ソフィアは市場を回り、頭の中で作っている料理の材料を幼少期から培ってきた目利きで買い集めた。


「お待たせしました」

「よし、それじゃ帰るとするかね」

「はい」


二人は拠点に帰ることにした。

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