#28 愛、美しく
中央広場
リアナ達の呼びかけに街の人達がどんどん集まってきた。
リアナは敷物を広げ、ラングと共にカバンの中身を一つ一つ置いていった。
ラングには一つ気にかかることがあった。
「これだと自分のじゃないのに自分のだと言って持っていく人がいるのではないか?」
「大丈夫ですよ、ここは小さな街で皆が顔見知りです、もし他人の物を持っていたらすぐに誰かがわかります、この街全体が家族みたいなものですから」
リアナはにっこりと笑った。
そしてそれを証明するかのように
「この指輪、あなたのじゃない?」
「これ、酒場の奥さんの物じゃない?」
と、自分の物以外の物も教えて渡す人々の姿がラングの目の前にあった。
ラングは衝撃だった、優しいという言葉では表現が難しいほど何とも美しい光景であった。
「……愛」
ラングはぼそりと呟いたのをリアナは聞いていた。
「そう!そうです、愛です。」
「失礼、私はそういったことがあまりわからないように育ってしまって、今つい愛と言ってしまったがこれは何という名前の愛だろうか?」
リアナはうーんと考えた。
「……ちょっと難しいわねぇ、まだ愛というものが何なのか完全には理解できていないのよ。でもこれは愛よ」
「はぁ…」
「ラングさんもそう思ったから愛って言葉が出てきたのでしょ?」
ラングは不思議に思った、確かに何故この光景を見て愛という言葉が出てきたのか。
今までそんなことは知らなかったはずなのに。
愛とは一体何なのだろうか?今のラングでは理解出来なかった。
「…やはり今の私には理解が出来ないようだ。だが何となくわかるというか何というか」
ラングは後頭部をかきむしった。
リアナはニコニコ笑いながら
「そのぐらいでいいのですよ、実際私にもはっきりと答えることが出来ないのですから。でもこの光景を見てください、これが答えだとは思いませんか?」
ラングは広場を再度見た。先程よりも多くの人で溢れ皆それぞれ助け合っている。
「あぁ、とても美しい光景だ。」
やがてラングが持ち帰った宝石類は数個を残して街の人々の手に渡った。
「この残ったのは何なのだろうか?」
「もしかしたら別に手に入れてた物なのかもしれないわねぇ。ラングさんよろしければそれはうちで買い取りましょうか?」
「買い…取り?」
「はい、その宝石をうちに貰う代わりにラングさんに相応の金額をお渡しします」
「…で、ですがこの宝石にも持ち主がいるのでは」
「うーんそうとも言えますけど実際探し出すことは出来ますか?」
リアナは少し怖い目をした。
「…い、いや無理だろう」
「はい、ではそういうことなのでとりあえずうちに戻りましょう」
「え?あっ、え?」
「貧乏旅なのでしょ?お金必要ですよね?ね?」
「あっ、あぁはい…」
ラングはリアナの不思議な圧に押されるがまま鍛治屋に戻る事になった。
ラングがリアナに連れられて戻ろうとしたときに街の人達がありがとうと手を振った。ラングは少し照れくさくなった。
こんな感情は初めてだった。何やら胸の中が浮き上がっているようなそんな感じだった。
だが決して悪い気はしなかった。
ラングはやはり人間界に来て良かったとしみじみ思っていた。




