#14 魔王は思いがけない相手と戦う
ラングが叫ぶと同時にクロが空へ羽ばたきながら魔法を唱える。
『ハードニング』
クロは羽を硬化させた。
上部の木の枝を切り、陽の光を森に落とす。
周囲が明るくなった光景でラングは目を疑った。
先程襲ってきた影は魔族であるコボルドだった。
「…何だと?」
戸惑うラングにクロが近付く。
「この事を話したかったのです」
「どういうことだ?」
「はぐれ魔族ですが奴等はニールキース様及び魔王の血族を恨んでいます」
ラングは戸惑った、まさか同族から恨まれていることなど知る由も無かった。
「何?恨んでいる?」
「はい、自分達が帰る前にゲートを閉められてしまったのですから」
クロの言うとおり、そこには恨みしか生まれない状況があったのだろうとラングは思った。
「しかし彼らはコボルドだ、チマを連れてくれば何とかなるのではないか?」
クロは首を振った。
「ラング様、それは悪手です。自分達は帰ることが出来なかったのに、チマやチマの親、つまり族長は魔界に住んでいる」
クロは下を向きながら
「これほどの恨みは他には無いと思われます」
「つまりチマの事が知れたら……」
クロは頷く。
「間違いなく我々を無視してチマの所に行くでしょう」
ラングは考えた。
まだ同じ魔族と戦うという事に抵抗があった。
「ラング様、はぐれ魔族を放置することは我々の目的を阻害されるということです。何よりニールキース様への障害を考えたら討つべきかと思い、先程お話をさせていただきました」
ラングは天を仰ぐ。
今から自分が行う事が正しいのか間違っているのかを考えた。
しかし、やはり決断は出来なかった。
ラングは服を脱ぎ、最大級に魔力を込め魔法を唱えた。
『ブラインド』
コボルド達を盲目状態にした。
魔王の魔力で放たれた盲目魔法、少なくとも3日は盲目状態が継続されるであろう。
「クロ!一旦この場を離れる!!」
ラングはクロに強く命令する。
「住居に向かう!私の腕を掴み全力で翔べ!!」
ラングは一度この場を離れる決断をした。
服を手に持ち魔法を唱えた。
『フロート』
ラングは体を浮かせた。
クロはラングの腕を強く掴み、住居まで翔んだ。
ラングはこのまま住居へ向かうことになる。
複雑な心境のまま人間界での生活を始める事となったラングには決断すべき事案がすぐに生まれてしまった。
そして魔王の魔力を使ったことで闇の力を感じた者が少し離れた都市にいた……。




