61話
ぼくの趣味はゲームをすること。高校生で若いんだから外で体を動かせ!と一般の母親なら怒るのかもしれない。しかし、ぼくは一人暮らしのため怒られることなく、だらけた生活を送っていた。テストまで残り2週間を切ったというのに本日もゲームをするつもりである。
ぼくはVRヘッドをつけ、ゲームにログインすると、見慣れた部屋の中にいた。ここは、てぃらみすの家で、ぼくはギルドに入ってからは毎回ギルドルームでログアウトしていたため、この場所からゲームが始まるのである。
(さて・・・。今日は何をしようかな)
今日はタイチとマールからログインできないと連絡があったので1人で行動する。使い魔のクーは、蘇生したとき100レベになっていて、これ以上強くなっても困る(ぼくのほうが弱いから)ので、精霊の森を監視してもらっている。ハルは相変わらずすべての大陸にマーキングをしようと冒険をしているので、邪魔するわけにもいかないだろう。何かあった時だけ召喚することにしていた。よって、今回はぼく1人で遊ぼうと思う。
外に出ると、緑一面に生えた草が風になびいて揺れている。この光景を見ると、ゲームだというのに自分が今ここに存在しているのだという感覚にさせられる。このままずっと寝っころがりながら1日を過ごすのも悪くはないのだけど、
(ひとまず、行ったことのない場所に行ってみよう)
まだまだ知らない土地に足を運んでみたい!そう思ったので、ぼくは精霊の森より北の方角に行ってみることにした。
歩き始めてから1時間が経過し、ぼくの目の前にはてっぺんが見えないほど高い山に遭遇する。看板には「鳥獣の山」と書かれていた。頭上を見上げると、確かにたくさんの鳥たちが飛んでいた。
山を登り始めると、結構複雑な道のりで、迷ってしまいそう。しかし、てぃらみすのギルドに帰りたいと念じれば一瞬で帰還できるので、山で遭難したとしても平気だ。
ぼくは、山を登り始めてしばらくし、異変に気付く。
(モンスターと遭遇しないなぁ)
いつもなら、モンスターが現れるのにこの山にはモンスターが見当たらない。空には鳥たちが飛んでいるのに、地上には姿すらない。
ぼくはしばらく上を見ながら歩いていると、2匹の黒い鳥が、複数の白い鳥に追われているのを目撃した。
様子を見ていると、白い鳥たちは、黒い鳥に攻撃をしている。
(いじめかな・・・?)
このゲームでもモンスター同士の戦いは見かけることはある。しかし、ぼくが見たことあるのは、1対1の戦いだけで、複数と少数の戦闘は見たことがない。
黒い鳥たちは攻撃をするわけでもなく、ただ逃げ回っているだけで、いじめられているのだと思った。正直、いじめは好きじゃないので見たくない・・・。
(助けにいくべきかな・・・?)
もしも現実世界の場合にいじめを目撃したら助けにいくべきなのだけど、ここはゲームの世界。弱肉強食の世界でもあるので、いちいち構ってもいられない。しかし、見ちゃったからには助けるべきだよね。
ぼくはブラッドウィングを使用し、体を宙に浮かせる。その後、彼らのもとに行こうとするのだが・・・
「あ・・・。遅かった・・・」
2匹の黒い鳥たちが、攻撃されたと同時に飛ぶことができなくなり真下に落下していった。その方角にぼくは向かう。
ぼくは、すぐに黒い鳥2匹を発見し、白い鳥たちがやってきたので一応様子を窺うことにした。どうやら、会話をしているみたい。
「交尾させろよ」
「お前たちに妹は渡さない」
「野郎には興味ねえんだよ」
「お兄ちゃん・・・」
どうやら、黒い鳥2匹は兄妹で、妹が襲われるのをお兄ちゃんが守っていたといったところだろう。複数で襲ってきた鳥たちは舌を舐めずり回しながら、怯えた表情を見て楽しんでいる。あと、なぜか知らないのだけど、この鳥たちは会話ができるみたい。ぼくでも会話を聞き取ることが出来た。
「なら、お前が反抗できなくなるまでやっちまうだけだ」
翼を羽ばたかせ、攻撃態勢を取る複数の鳥。黒い鳥2匹は逃げ場を失い、兄が妹を守るようにかばっている。
モンスター同士のいざこざにぼくが介入してもいいのだろうか。でも、なぜかほっとけないんだよね・・・しょうがない。
トランス[吸血鬼]
ぼくは、トランスを使い、複数の鳥と黒い鳥の間に割り込み、今にも攻撃しそうな複数の鳥たちの動きを止めた。
「お前は誰だ?邪魔だ!一緒に狩られたいのか」
複数の鳥たちはニヤニヤしながら
「この女も一緒にヤッちまおうぜ」
襲いかかってきた。
相手の実力差もわからないのかな?まあ、レベルでいったら向こうの方が上なんだけどね・・・。
現在ぼくは62レベ。ギルド戦が終わった後もレベル上げを地道にしていたので、少し上がっているのだが、目の前にいる敵は70レベ前後と、ぼくよりはレベルが高い。しかし、ぼくのトランス[吸血鬼]はステータスの大幅な向上により、70レベの敵も容易く倒すことができる。
ぼくはブラッドマジックを相手に向かって放ち、10匹いるうちの3匹を一瞬で溶かした。
「なっ・・・?」
残りの7匹が目を丸くしてその光景を見ている。続けて、ブラッドナイフを使用し、相手が目視できないスピードで7匹の鳥たちを斬りつけて、
「いじめはだめだよ?」
消滅させた。ぼくがまるでこの鳥たちをいじめているみたいだけどね・・・。
すべての敵を倒し、その場には2匹の黒い鳥とぼくだけが残る。
「どなたかわかりませんが、ありがとうございます」
妹をかばっていた兄の黒い鳥がお礼を言って来た。よく見たら、人間世界でいうカラスにそっくりだった。
2匹のカラスのレベルを確認すると、兄が73レベ。妹が45レベで、さきほど襲ってきた鳥たちより、兄のほうがレベルは高いのだが、妹をかばった状態で戦うことができなかったのだろう。
「ぼくはもこ。君たちの名前は?」
「私はクロウ。妹が、ローナと言います」
クロウが妹に目を向けると、妹も会釈をしてきた。
「あなたは命の恩人です。私にできることがあればなんなりと申しつけください」
「いや・・・。別に見返りを要求したくて助けた訳じゃないから大丈夫ですよ」
ぼくは手のひらを振って、クロウの申し出を断ると、
「いえ、このご恩は返さなければいけません。どうか・・・この命、お使いください」
今晩はやきとり!うまそう~。って、カラスを食べるのはちょっと・・・。うーん・・・どうしよう。あっ!
「ぼくの使い魔になる?」
現在、ぼくの使い魔はハルとクーがいる。しかし、あと1体の使い魔と契約ができるので聞いてみた。
「私でよろしければ・・・。よろしくお願いします」
ぼくが使い魔申請を出し、相手がそれを許可することで使い魔の契約は完了する。相手も承諾をしたみたいなのでためしにステータスを見ると、
プレイヤー名:もこ[Lv63]
所属:てぃらみす
種族:吸血鬼サキュバス
使い魔名:クー[lv100]
使い魔名:ハル[lv85]
使い魔名:クロウ[lv73]
HP1330/1330
MP2460/2460
力1
魔力159
速さ1000※速さの基準100。
スキル:吸血+3 誘惑+3 ブラッドマジック+3 成長 ブラッドバリア+3 トランス ブラッドナイフ+3 ブラッドウィング ハートバリア
装備:高級魔導師の服 金の腕輪
ちゃんと契約は出来たみたい。ステータスを見て思ったけど、ぼくよりレベルが高い使い魔しかいない・・・。
「私は、闘いでの戦力になれませんが、観察力に優れています。また、偵察をしたい場合は私に言ってください」
「うん。わかった。よろしくね」
クロウはぼくのほうに飛んできて・・・
「うあっ」
ぼくの肩に止まった。このカラス・・・。礼儀を知らないのかな!?いきなりぼくの肩に止まってくるなんて、非常識!
ぼくの思っていたことが顔に出ていたらしく、クロウがその行為について説明する。
「もこ様。これは忠誠の証でございます」
クロウは自分の顔をぼくの顔にくっつけ、すりすりしてきた。鳥たちの忠誠心はよくわからないのだけど、そういうことにしておこう。ごめんね?失礼な鳥だと思って。
「そうなんだ・・・。まあ、これからもよろしくね。あ、妹さんはどうするの?」
ぼくと契約したクロウは、ぼくと冒険することになるので、その間妹を1匹にさせてしまうことに気づく。
「父親の元に帰らせます。ローナ。親父のところに1人で帰れますか?」
「はい・・・。お兄様。お勤め頑張ってください」
妹は空に向かって羽ばたき、遠くに飛んで行ってしまった。
「本当に、ぼくの使い魔になってよか・・・」
よかったの?と聞こうとしたのだけど、聞けなかった。ぼくがクロウを見た瞬間にわかったからだ。本当は妹と一緒にいたいということを・・・。
クロウの目からは涙の雫が零れ落ちていた。
「もこ様。失礼しました。私の方からお願いしたのです。お気になさらずに・・・」
「ぼくは、拘束するのが嫌いだから、日頃は妹のお世話をしていていいよ」
「いえ。私はあなたのお世話を・・・」
「クロウ。ぼくにはあと2匹の使い魔がいるから・・・。だから大丈夫だよ?」
「2匹も・・・?!それでは・・・お言葉に甘えさせていただきます」
クロウから流れる涙は止まり、元気を取り戻したように見えた。
「よーし。じゃあ、冒険の続きでもしようかな」
「私もご一緒してよろしいですか?」
「妹さんのところに帰らなくて大丈夫?」
「はい。もこ様の役に立てるかわかりませんが、一緒に行かせてください」
「わかった。じゃあ行こうか!」
ぼくとクロウは共に冒険をしようとするのだが・・・
ガサガサ
今までモンスターがいなかったのに、10匹のモンスターに遭遇する。
「さっきまでいなかったのにどうして・・・?」
「もこ様。どうやら、ここにきた何者かがモンスターを狩りつくして、今になって沸いてきたようです」
「へぇ~。そうなんだ・・・」
見た目が強そうなモンスター。現実世界でいうと、鷲に見える。しかし、大きさが3mぐらいある・・・。
ぼくはトランス[吸血鬼]を使ってしまったので、奥の手が使えない。まあ、クロウもいるし、なんとかなるよね・・・?
「クロウ!一緒に・・・」
「妹が心配なので少し見てきますね」
まるで、この窮地から1匹だけ逃げるかのように羽を広げ、
「ご武運を」
飛んで行った。
「クロウ・・・?ちょっと!!!」
手を伸ばしたがすでに遅かった。ぼくはどんどん遠ざかるクロウをただ黙って見ている。命に代えてもぼくをお守りしてくれるんじゃないのですか・・・?
ぼくの正面には10匹の鷲がいる。
「鷲さん。こんにちは」
「ガァ!!!!」
もしかしたらクロウのように言葉が通じるのかと思っていたので、挨拶をしてみたが、全然通じなかった。
「こっちにこないでえええ」
10匹の鷲がぼくに襲って来たので全力で逃げ出す。先ほど襲われていたクロウと同様、ぼくは鷲にいじめられたのだった。
長いお休みをいただきました。すみません><
もこの使い魔を犬、クマ、カラスにしました。




