60話
ぼくは学校の帰り道、学校に行く。別に忘れ物をしたから学校に戻るわけではなく、アツシとユキアとの約束があるため、男のときに通っていた学校へ向かっていた。
ユキアとアツシには、今のぼくが男の神崎もこと同一人物だと疑われていて、そのことについて詳しく話すつもりだ。
ぼくは久しぶりに元自分の通っていた学校に着くと、校庭に桜の木があるのだが、季節が冬を迎えていることもあり、枯葉が地面に散らばっていた。
(はぁ・・・。話すのが憂鬱だ・・・)
この葉っぱのように、ぼくの心も枯れてしまっている。いくら、親友だからといって、自分の姿が女の子になってしまったと話すのは気が進まない。
ぼくは、校門で待っていると、アツシとユキアが2人揃ってやってきた。
「おまたせ。神崎さん」
「待ったか?もこ」
アツシはまだ、女のぼくと男のぼくが同一人物だと思っていないらしく、親しげに呼んだりしていない。しかし、ユキアは、ぼくが同一人物だと確信をもって、昔の頃と同じように名前で呼んだ。
「ここじゃ、人目が付きやすいからどこかの教室に入ろうか」
「え。でも・・・。制服違うから怒られちゃうんじゃない?」
「まあ、教師にばれたら全力で逃げようぜ」
ぼくもこの場所で話すより誰もいないところで話したいので頷く。
校門から校舎内までの道のりは遠くない。しかし、周りの視線が気になり感覚的には遠く感じた。
校舎まで向かうときに、ぼくとすれ違う男子生徒2人の会話が聞こえる。
「おい!見ろよ!あれ」
「誰だ!?」
ぼくは、ここの学校とは違う制服を着ているため目立ってしまう。不法侵入罪になったりしないよね・・・?
校庭にいた男子、校舎から出てくる女子たちはぼくをじっと見つめて観察している。部外者のぼくが来たことによって噂が広まったらしく、教室の窓から双眼鏡で覗く生徒もいた。って、双眼鏡を常に持ち歩いているの?ここの学校も変わった人多いんだ・・・。もしかして、それを使って女子更衣室を覗いたりしていないよね・・・?
「あんな可愛い子がもしかして転入してくるのか?」
「やべえ。スクープだぞおお」
どうやら、この学校の生徒全員はぼくが転入してくるため、下見に来ているのだと勘違いしているみたい。教師にばれないことを願おう・・・。
周りの事は無視をして、ぼくたちは校舎内に入り、美術室を借りることにした。美術部の部員がいるんじゃないかと思ったのだけど、期末テストが2週間後には始まるので、勉強に専念するために部活を禁止しているらしい。ぼくは、部活に入ったことがないので、そういう制度があるなんて知らなかった。テストももうすぐ始まるんだよね・・・はぁ・・・。
「んじゃ。話してもらおうか」
ユキアが腕を組み、ぼくに視線を送ると、アツシもドアを閉めてこちらに来た。
「えっと。驚かないで聞いてね?」
二人が頷き、続けてぼくは自分に起こった出来事をしゃべる。
「気づいたら・・・。女になっていた・・・」
「・・・それで?」
「気づいたら・・・美少女になっていた・・・」
「・・・それで?」
「元の姿に戻るかな~。と思っていたけど、戻らなかった・・・」
「・・・いや、ぜんぜんわからないわ」
説明が難しい・・・。というか、ぼくが女になった原因はわからない。ゲームしたら特典者に選ばれて女になっちゃったって言えばいいのか・・・。うーむ。
「つまり、お前はもこなのか?」
アツシはぼくが男のときのもこであるのか確認してきた。
「・・・うん」
「本当の本当か?信じられない・・・。じゃあ、俺の像さんの長さは?」
「3cm」
「この適当な回答・・・。間違えない!こいつはもこだ!!」
「いや、それはもうわかっているから・・・」
ユキアはアツシにツッコミを入れる。
「もこ・・・。お前、ユキアと同じ性癖に目覚めてしまったのか・・・。女装をするのは止めない。でもな、整形や手術までしてすることか?!」
「おい。アツシ。俺がこんな顔なのは生まれつきだ」
ユキアはアツシにマジ切れしている。というのもユキアは女顔に生まれたことにコンプレックスを抱いているため。
「冗談だよ・・・。でもまあ、なんでもっと早くに教えてくれなかったんだ?寂しかったんだぞ!もこがいなくて」
「だって・・・。気持ち悪がられると思ったから・・・」
あと、別に女の子を目指してこんな身体になったわけでもないと伝える。
「周りはどう思っているかは知らない。でも、俺はそんな姿になったとしてもお前を親友だと思っている。中学の頃、お前だって周りから嫌われていた俺に接してきてくれただろ?それと同じだ。周りがどう思っていようが、お前がどんな姿になったとしても、親友なのはかわらないだろ?」
アツシ・・・。
「ごめん・・・。アツシの言うとおり、ぼくが間違っていた。正直に話すね。ゲームしようとしたら・・・吸血鬼サキュバスの女の子になっていたんだ・・・。血と精気がないと生きていけなくて・・・」
ぼくは自分の知っている限りの情報を伝え、その後どう生活していたのかを伝える。
「あと、困ったら・・・その、血と精気をくれると・・・うれしいかな・・・?」
親友たちの前で、言うはずでなかった吸血鬼サキュバスのことも言ってしまった。
「それは・・・。大変だったな・・・。血と精気はユキアが協力してくれるよ」
アツシはユキアの肩に手を置き、よろしくと言った。
「いや。任されたのはお前だ。もこもアツシも大変だろうが頑張れよ」
ユキアもアツシの肩に手を置く。
「ユキア。つれないこと言うなよ~。お前も俺の親友。困ったときはお互い様だろ?」
「私、女の子だから、精気でない~」
「こういうときだけ女のフリするんじゃねえ!!」
2人はぼくの擦り付け合いを始めているのだろう・・・。やっぱり・・・
「ぼくって気持ち悪い・・・?」
親友って言っても、それは男のときのぼく。今のぼくは悪魔の女になってしまったのだから、別人みたいなものだろう。
ぼくの頭の中では、ガラスが割れるように二人との思い出が砕け散っていく。すると、自然に涙が出てきた。
「そんなことねえって。な?ユキア」
「あ、ああ。もこは俺より可愛くなってびっくりしただけだよ」
二人は泣いているぼくを励まそうとしているのだが、
「じゃあ・・・なんで、拒否するの?ぼくが気持ち悪いからでしょ・・・!はっきりいってよ・・・。じゃないと、余計に悲しい・・・から」
もしかしたら、血と精気を吸うのが痛いものだと思って拒否しているのかもしれない。でも、ぼくは2人なら協力してくれるだろうと思っていたので、つい怒ってしまった。そして、すべて話してしまったことに後悔している。もしもこの話をしなかった場合、アツシとユキアとは男の神崎もこではなく、女の神崎もことして接することが出来たのだから。
もう、これで2人とはお別れかな・・・。こうなることはなんとなくわかっていたんだ。でも、また昔のようになんでも話せる関係になれるんじゃないかと思って、つい・・・すべてのことをしゃべってしまった。アツシとユキアだったらわかってくれる。そう思っていた。それは、ぼくの理想。現実とは儚いものなんだね。
ポロポロッ
ぼくって泣いてばかりだね・・・。男のときはあんまり泣いたこともなかったのだけど、女のぼくはすぐ泣いてしまう。いや、昔から涙もろいのかもしれない。ただ、前は悲しいことが少なかっただけで、女の子になってから悲しい日々が続き、泣くことが多くなったのだろう・・・。
クーが死んでしまったことによってぼくは悲しんだ。今回の悲しみは、それと同等のものだった。目の前にいる2人は死んだわけでもないのに、もうしゃべれなくなるのかなと思うと、余計に悲しさが増す。
「わるい。別に、もこが気持ち悪いからじゃなくてだな・・・。もこがすげえ可愛くなっていて、血と精気を吸われて、理性が保てるかわからないから、その・・・嫌ではないんだけど、親友を襲うことになるのが怖かっただけだ。お前もそうだろ?ユキア」
「ああ・・・」
あれ・・・?
「本当に?」
ぼくはその言葉が真実か再確認すると
「ああ。って、恥ずかしいからもう聞くなよ!」
「・・・。ごめんね・・・」
ぼくは勘違いしていたみたい・・・。2人は別にぼくのことを嫌いになったわけではなかった。それに、食事に関しては、ぼくのことを想ってお断りしていたんだね。嬉しい・・・。
「ユキア、アツシ。ありがとう。血と精気は大丈夫だから。一応・・・。ぼくにはもう、彼氏もいるしね・・・」
タイチだけに血と精気の提供を任せるのは少し負担が大きいと考えたため、ぼくはアツシとユキアが協力してくれれば助かると思っていたのだけど、2人に襲われても困るし、頂かないことにしよう。
「「え・・・?もこ、彼氏いるのか・・・?」」
二人同時に質問され、同じ内容だったので2人に
「うん?いろいろあってね」
と伝えると・・・。
「彼氏がいるなんて・・・」
「いや・・・。まだチャンスは・・・」
2人が何か呟いているけど全く聞こえない。しかし、その後に
「「俺の血と精気を吸えええ」」
(え?いきなりどうしたの?アツシ?ユキア?)
2人がぼくの肩を掴んできて、迫ってきた。
「ユキア。お前嫌がっていただろ?俺がやってやるよ」
「アツシこそ嫌がっていただろ!俺に任せとけ」
二人がいきなり豹変して、喧嘩し始めている・・・。
「ぶっ」
その姿を見て、ぼくは笑ってしまった。昔にもこんなことがあったっけ。
「何笑っているんだ!お前が可愛くなったせいでこうなっているんだぞ!」
アツシがぼくを捕まえようとするが、速さ1000あるぼくはひらりと躱す。しかし、後ろにいたユキアがぼくを拘束してきた。
「ユキア・・・!?」
「お仕置きだな。アツシ、くすぐってやれ」
「おーけー!」
アツシの魔の手がぼくに近づいてくる・・・。
「だ、だめええええええ」
結局、アツシとユキアはぼくがどんな姿になったとしても何も変わらない。変わったとしたら、ぼくを異性として見ることだけだ。それはそれで、困るのだけど・・・。でも、また昔のように3人で仲良く話せることがとてもうれしい。ってくすぐりはだめえええ。
と、そのとき。
「お前たち!ここにいたか!!」
体育教師っぽい人がこの部屋に入ってきた。
「アツシ!ユキア!他校の女子生徒を連れて何やって・・・何襲っているんだ!!」
今、ぼくはユキアに抑えられ、アツシの手がぼくに伸びている状況で・・・。襲っていると思っているらしい。
「お前ら、罰として校庭の枯葉を掃除しろ」
「やべ。予定通り逃げるぞ!」
ぼくたち3人は逃げようとするが・・・入口には鬼教師が立っているので・・・。
「逃げられなかった場合はどうするの・・・?」
予想外の出来事にぼくはアツシに聞いてみると、アツシはぼくの質問には答えずに土下座していた。
「じゃあ、ぼくは部外者だから・・・」
ぼくは、爪先立ちでゆっくりその場を去ろうとするのだが、
「誰だかしらんがお前もだ」
教師に制服を捕まれ、ぼくも掃除をさせられることに。うぅ・・・。
「毎年落ち葉が多くてな。ちょうど掃除係が見つかってよかった。ガハハ」
毎年か・・・。そういえば、葉っぱや花は枯れてもまた咲くんだよね。
(ぼくの花は咲いたから、次は君たちの番だね)
ぼくは寂しそうにしている桜の木に向かってそう思ったのだった。
いつもより長くなってしまいました・・・。
そして、遅れまして申し訳ございません。
誤字多いかもしれません・・・。




