43話
タイチとマール、それとぼくの3人で自分の家から少し離れたところにある服屋に来ている。マールが受験勉強に嫌気がさして、「服買いたいです」とメールがきていたので。
服屋に行く前に、ぼくは2人と集合した場所で、先ほどの戦闘のことや、ギルド戦で闘うことになった原因を説明し、そのギルド戦に2人が参加できるか聞いてみたところ、一緒に戦ってくれるようなので安心した。マールは受験勉強で忙しいんじゃないかな?と思ったが、息抜きで来てくれるそうだ。今日も息抜きらしいが勉強のほうは大丈夫なのかな・・・?まあ、マールは割としっかりしているのでそんなに心配しなくてもいいだろう。
この服屋では女物の服しか置いていないので、タイチにとってはいづらい場所だと思っていたのだが、大丈夫そうだ。タイチは服を見ていると見せかけて巨乳さんを凝視しているんだけどね・・・。むぅ。
「見てください。タイチさん!あれ!!もこさんにすごく似合うと思うんです」
マールの指さす方向を見ると・・・とても可愛らしい服がそこに。だけど・・・すごく派手で着たいと思わない。
「似合いそうだな!もこ、試着してみろよ」
タイチもマールの意見に賛成のようだ。
「いえ・・・私には似合わないですよ~。マールさんのほうが似合うんじゃないですか?」
着たくもない服を着せられそうになったので、マールにおすすめする。もともとマールの買い物に付き添いでいるぼくは、服を買うつもりなどない。というか、いらないよ。そんなふりふりの服・・・。
「おかしいですね。以前のもこさんはこういう服を見ると目を輝かせていたのですが・・・」
「そうだな。どうしたんだろうな?」
ぼくは記憶喪失になって交通事故にあった時、記憶を取り戻しているのだが、まだ記憶が戻っていることを誰にも言っていない。そして、記憶のあるぼくは、ふりふりの服を見て、目を輝かせたことは1度もない。つまり、この2人はぼくにこの服を着せさせるために「以前のもこ(さん)は着ていたのに~」と嘘をついている。腹黒すぎる!!
「そういうのは好きじゃなかったような・・・」
「記憶を取り戻したのか?!」
「うっ、いえ・・・。戻ってないですけど、そんな服本当に以前の私は好きだったのでしょうか・・・?」
「そうですよ!もこさんが選ぶ服はどれもこんな感じでしたよ~♪」
「そ、そう・・・ですか」
ぼくは記憶が戻ったことをばれないように、反論することをやめた。以前、ぼくが今通っている学校でも似たような服を着せられたことがあったのだけど、すごく恥ずかしいんだよね・・・。
ぼくはその服を手に取り、試着室にいく。
(もう・・・。記憶が戻ったことしゃべりたい・・・)
病院のときに言えばよかったかな・・・。どんどん言えない状況に追いやられる。でも今はまだ、しゃべれる勇気を持てないので、我慢してこの服を着た。
ぼくは試着室から出たいのだが、その・・・鏡に映ったぼくの姿を見て、羞恥心がものすごく高まってしまい、試着室のカーテンで服を隠しながら顔を出し、
「タイチさんは・・・あまり見ないでください・・・」
と言った。好きな人に見られるのは嫌!という訳ではないのだけど、あまり見られると・・・恥ずかしいです・・・
「もこさん!私も見えません。隠さないで見せてください!」
マールが強引にカーテンをぼくから引き離した。隠すものがなくなったぼくは恥ずかしさのあまり、手で隠そうとするが、隠しきれない。
「もこさん・・・すごく可愛いですよ!ね、タイチさん?」
「お、おう。いいんじゃないか?」
あまり見ないでって言ったのに・・・。タイチがぼくを覗き込むように見てくる。今だけは巨乳の人を見ていいからぼくは見ないでよ・・・。
その後、ぼくは元着てきた服に着替え、このままだとふりふりの服を買わされそうな流れなので、他にいい服がないか探す。すると、白と黒の2種類ある服を見つけた。
「るまさん。これ一緒に買いません?」
さっきの服とは全く違うタイプなのだけど、とても可愛らしいコートを指さす。
「いいですね!これ。私が白で、もこさんは黒ですね」
吸血鬼と聖女にぴったりな色。ふりふりの服よりこちらのほうがいいので、マールは白。ぼくが黒のコートを買うことにした。
マールとお揃いで買う服は、冬に着る暖かそうなダッフルコートだ。時期的に後1か月もすれば頻繁に着ることになるだろう。
「ちょっとタイチさん。その服は買いませんよ?戻してきてください!」
タイチが先ほどぼくが試着していた服をカゴに入れていたので、返すように言った。タイチにとってはこの服を買って、着てもらいたいそうなのだが、ぼくは着ないよ~。
タイチは、暗い顔をしてその服を戻しに行った。
ぼくとマールはそれぞれ違った色のコートを手に取り、会計へと足を運んだ。
「1万2千円になります」
レジの店員さんがこの服の値段を言う。ぼくは今まで服にお金をかけたことはなかったのだけど、女になってから服の代金で仕送りがなくなってしまうのではないかと思った。しかも、記憶がないときのぼくは化粧品まで買っていて、今後の生活費がどんどんなくなっていく。まあ、食事に関しては血と精気を吸うだけなのでお金がかからない。ただ、学校に行くときは、お弁当を作って持っていかなければいけないのでその分のお金は取っておく必要がある。ぼくの貯金が後1万5千円しかない・・・そう思っていたのだが、
「もこさん・・・お財布持ってくるの忘れました・・・」
マールが服を買いたい!と言って、服屋に来ているのに、財布を忘れるなんて・・・ さっきしっかりしているから大丈夫だと思っていたのだけど、勉強大丈夫だろうか・・・
「これ使ってください」
マールとお揃いで買うつもりだったのでマールに「やっぱり買いません」って言われたら少し悲しい。そのため、ぼくは1万2千円をマールに渡す。ぼくは由里子さんのように汚い大人になりたくはないので、服を買ってあげるつもりだ。男前でしょ♪
マールは、絶対お金返します!と言ったのだけど、断った。
「ありがとうございます!高い服を買っていただいて」
「いえ。るまさんには記憶喪失になったときにお世話になったので、そのお礼です」
記憶がないとき、自分が誰かもわからなかったので、ものすごく不安だった。しかし、マールとタイチが支えになってくれたこともあり、平常心を保つことができたのだ。こちらのほうが感謝してもしきれない。タイチには今度デートのときにでも何かあげた方が良いかな?まあ、女の子にとって1番大切なものをあげたから別にいいか~。(泣
こうして、ぼくたちは3人で楽しく買い物をしたのだけど、ぼくの財布だけは寂しそうにしていたのだった。
遅れました!申し訳ございません><




