第二十話
緊張しながら見つめる。
いや、先程の独り言を聞いた限りではゴブリンを探していた。恐らく調査の依頼を受けたか何かでここへたどり着いただけだろう。
まさか、ダンジョンを探していた、なんて事はないはずだ。
と、ふと重要な事に気付き、俺は愕然とした。
こいつ、イケメンか…。
俺の中で急速に殺意が沸いてくる。
父様を森の日だまりの暖かさのイケメン、アレックス王子を初夏の太陽の鮮烈さのイケメンと例えるなら、こいつは雪を割ってでも育つ雑草の強さを持つイケメンと言ったところだろうか。
鋭い目付きは何物にも負けたくないと自己主張をしているようだ。
「ナビ、全員でかかればこいつをヤれるかな…?」
『ダンジョン内の全戦力を以て戦えば、多少のすり傷と体力の低下を与えるところまで追い込めるでしょう』
それって疲れるだけでほぼ無傷ですやん。追い込んでないですやん。
ナビのポジティブな戦力評価を聞き、残念ながら当初の予定通り交渉を続けることにする。
そうだ、落ち着け、俺。感情に飲み込まれず、割りきるんだ。
割りきれよ。でないと、死ぬぞ。
自分に言い聞かせる。
ふう、落ち着いてきたぞ。
「おーい?」
はっ。
怒りに飲まれている間にやつは何か喋っていたようだ。
’すみません、ぼーっとしていました。もう一度言っていただけませんか? ’
「…まあいいだろう。先ほども言ったように、ゴブリンがこの辺りに出ると聞いて、その調査でここまで来た」
やはり推測通りだったようだ。という事は、ゴブリンさえいなければこいつはもうこの周辺にこなくなるはず。
よし、このダンジョンを隠す為に。ここは、人間に対して無害であることをうまくアピールするべきだろう。
「こちらからも聞きたいが、この辺りでゴブリンは見なかったか?」
’この洞窟に来ましたよ’
男の表情に更に鋭さが増す。アンタ目つき悪いよ、怖いよ。
'話を聞いてくれず襲いかかってきたので、養分にしました。いけませんでしたか?'
「養分に…なるほど、植物だからな…。いや、全く問題ない」
うん、此処まで嘘は言ってない。ダンジョンポイントという養分になったのは間違いないからな。
'会話の通じる相手でなく、残念でした'
「ふうん…やつらとは友好的ではないんだ…へぇ…」
よし、いい感じで理解が進んでいるな。
「…根本的なところを聞いてなかったんだが、お前は一体何なんだ?」
'私はこの地に生きる植物です。静かな暮らしを望んでいます'
とりあえずは突然変異の植物として認識してもらおう。
この答えで納得してもらえるだろうか…。
「植物ね。ゴブリンが栄養か?」
'水と土があれば、特に多くの栄養はいりません。今回は襲われたので仕方なくです'
「…襲われたら、人間も栄養にするつもりか?」
'わざわざ私に襲いかかる理由はないでしょう? それに私は普段は隠れて暮らしています'
ふーむ、とやつは考えているようだった。
ここで頼めばいけるか…?
'お願いがあります。私がここで生きている事を秘密にしていただけませんか? その方が私は平和に暮らせると思います'




