第十九話
いつまでも倒れていても何も解決しない。残念ながら。
「ナビ、どんな人が近づいてきてる?」
『人間の男性です。十代後半。帯剣し革の鎧を着こみ、力量はかなり高そうな気配をまとっています』
俺は良くわからないが、ナビは相手の気配から大体の力量を読み取れるらしい。
例えば生き物は質量があり、体温があり、呼吸をしている。質量があれば動けば地面に振動が伝わり、体温があればあたりに熱を放ち、呼吸をすれば空気が動く。
同じように、こちらの世界の[ステータス]には周囲に影響を与える何かがあり、それを感知することで相手の力量を計ることができる、らしい。
「それは現在の眠り蔦、幻惑蝶の状態異常攻撃に耐えられるほど?」
『高い確率で耐えると思われます』
「眠り蔦も幻惑蝶も上位種がいたよね? 召喚するポイントは足りる?」
『対象を確実に眠らせる為に必要な上位種の召喚には7000必要です。現在の残りポイントは6800』
足りない。
まずい。非常にまずい。なんで一人でこんな所をうろついているのか知らないけど、ダンジョンがあることがばれてしまう。
いっそ行方不明になってもらえば…。
俺は慌てて頭を振った。いや、それはダメだ。
力押しが通用するかはともかく、そんな手段で自分だけの保身なんて考えちゃダメだ。
どうしよう。
力押しがダメなら。
…。
交渉してみるしか、ないか。
俺は眠り蔦と這い寄る蔦に命令を与え、対象がダンジョンに来るのを待つことにした。
ダンジョンの周りで男はしゃがみ、地面を観察している。
「足跡は複数…十匹前後というところか…」
そうして辺りをさらに調べ、やがてダンジョンの入り口を見つけた。
「ここがゴブリンどもの棲家か? 入り口を偽装した跡があるな…ゴブリンにしては随分知恵が回る」
男は慎重に辺りをうかがいながら、洞窟の中に入っていった。
中は暗いため、男はぶつぶつと唱え、魔法を使う。現れた明かりは数メートル先まで照らし出した。
狭い道をそのまま少し進むと、やがて、とおせんぼをするように這い寄る蔦が、道の上の空間に広がっていた。
男がもし剣を振るえば、一撃で蔦は引き裂かれるだろう。
だが、男は戸惑った顔で蔦を眺めていた。
蔦は、`お話したいです`と文章を作っていた。
「…こんにちは」
`こんにちは!`
男が語りかけるに従い、這い寄る蔦は形を変える。
その表情は混乱したままのようだった。
「あー…。話、わかるのか?」
`少しだけ。`
元日本人らしく、a little 的な答をつい返してしまう。
`お話してくれて嬉しいです`
「…お、おう」
`今日はどこから来たのですか?`
「ここから歩いて一日ほどの街から、だな。」
さて、ここからが問題だな。
`何か目的があってここに来たのですか?`




