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第十七話

我が父様こと、アイン・ガルド・レオンフィールドによる簡単移動講座~。

まず魔法を使うために精神を落ち着けます。

次に「道」を空間に作ります。進行の邪魔になる、あらゆる物を極限まで排除する作業です。

さて今度は自身の周りに「鎧」を張ります。進むための力を肉体ではなく「鎧」に肩代わりさせるためです。

準備が済んだところで自身に力を加えましょう。「道」がしっかりしていれば、加速が十分に得られるはずです。

さあこれで時速千kmで移動できます。一時間もあれば領地内の望む所へ巡る事が出来ます。


理屈はまあ理解できなくもない。

出来なくもないが…これを魔法として発動させる事は、世界でも数人もいれば良い方だろう。俺の知る限りでは父様にしか扱えない魔法だ。一応やり方を習ってはみたものの、あまりにも術が高度過ぎて、とても真似出来るもんじゃ無かった。

なんであんなに父様は隔絶した能力の持ち主なんだ…。

いいなあ。「道」は地上である必要はなく、水中だろうが空中だろうが作る事が出来る。俺も空を飛びたいなあ…。


さて、まあそんな能力の持ち主が治安維持に動いたんだ。ゴブリン程度はあっと言う間に解決だろう。

こっちはこっちで、余計な事は考えず、次の休日の茶会に集中しよう。



「などとフラグを建てたつもりはなかったんだけど」

その日の夜。流石に一日ではゴブリンも探せなかったらしく、父様は夕飯前に一度帰ってきた。

まだ被害も出ていないので、そこまで優先する事でもなかったのだろう。

「…で、なぜかダンジョンにゴブリンが十体以上近づいている、と」

『その通りです、マスター』

先日のゴブリンは、どうやらこの群れからはぐれた一匹だった様だ。まさか群れがやってくるとは考えてなかった。

いや、考えたくなかった、のだろう。

…現実はどこの世界でも厳しい。見ない振りをしたところで待ってはくれない。

結局はこうして追い込まれてからの対応になるのだ。


ダンジョンは敵がいる中では作り替える事が出来ない。

拡張することも、罠や配下のモンスターを配置することも。理屈は分からないが、これもダンジョンのルールらしい。

敵の存在はダンジョンの周囲百メートルほど前から感知出来るらしく、そこから侵入してくるまではダンジョンの操作は出来る。

ゴブリン達の現在位置、残り70メートルほど。


「とにかく、やるしかない」

『はい、マスター』

ナビはいつもの様子の淡々とした声で応えてくれる。

一人ヤるのも二人ヤるのも一緒とはよく言ったものだ。先日よりは余程覚悟の決まった自分。

まだまだポイントは余っているんだ。ゴブリンの二十体や三十体なら瞬殺出来る。

まだ少し震える手を抑えながら、俺はナビに指示を下すのだった。

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