第十六話
とても残念な事に?
この世界には治癒魔法があり、ボコボコになった顔もあっという間に治る。
いやまあ、医者要らずで良いこと何だけどさ…。
なお、治癒魔法のおかげで不治の病はほぼ存在しない。末期のガンだろうがウイルス性の心臓病だろうが一発治療が可能だ。
魔法も万能ではないけどね。老化は防げないし、死者の復活も出来ない。まあ復活に関しては、死後すぐであれば治癒が効く可能性はあるみたいだ。心臓マッサージで息を吹き返す感じなのかな?
あと、魔法の効かない病気もあるし、やはり不老や不死はこの世界でも夢の研究だ。そのうち、「不老魔法は、ありまぁす」なんて事を言う女性研究者が出たりするのかね。
ともあれ、残念ながらユリウスの顔は治療された。
まあ後遺症が残るような怪我をさせたとなれば、レオンフィールド家とウッドランド家がちょっと仲が悪くなっちゃうからね。怪我の痕がなければ…まあなんとか収まる範囲かな。たぶん。
…まあ問題が起きても別にいいか。ははははは。
俺の開き直りの内心はともかく、色々と親の話が交わされた結果、条件付きで無かった事になった。
その条件とは…。
「男の子のお家にお呼ばれするんだから、可愛い格好をしないと~」
お母様が張り切って俺の支度をしてくれている。そう、俺はウッドランド家に招かれ、ちょっとしたお茶会に出なくてはいけなくなったのだ。
流石と言えば良いのか。女性の恨みを買っても守りに入るどころか、グイグイと攻めて行くのがウッドランド家の方針らしい。呆れるばかりだ。
そして俺は憂鬱だ。
「リルちゃん、このドレスはどうかしら~」
さっきからお母様のテンションが高い。俺はずっと着せ替え人形だ。
「お母様…もうよろしいのでは? 私は先程のオレンジのドレスが良いと思います」
「そうだけど~。せっかくの機会なんだから、色々と着せてあげたくて~。ほら、こっちのピンクも可愛いわよ~」
どうして女性の着替えってのはこう長いんでしょうねぇ…。服なんてビシッと適当に決めて、後は適当に小物を合わせる位じゃダメですか…?
メイド達も一着一着、合わせる度にお母様とはしゃいでいる。
そう言うのは自分の人形でやってくれませんかね。この世界にはバー○ー人形とか売ってませんか?
結局、服だけで三十着、五時間ほどかかって決めた。
なお、決まったのはやはりオレンジのドレスだった。
死にそう。
「リル、ドレスが決まったそうだね」
当日に来ていくドレスが決まり、部屋に戻ろうと言うところで父様に会った。
普段着ではなく、グリフォンという幻獣の革を使った鎧を着ている。
「父様? その出で立ちはどうなさったのです?」
「領内でゴブリンを見かけたという情報が寄せられてね。ちょっと見回ってくるよ」
心配なのか、そっとお母様は父様に寄り添った。
「まあ~。あなた、お気をつけて~」
「心配いらないよ、サーシャ。すぐ帰る」
「あなた…」
「サーシャ…」
二人は熱く見つめあって唇を近づけ…。
「うぉっほん!」
ちっ、俺のお母様といちゃつきやがって…羨ましい…!
二人はさりげなく距離をとった。
「じゃあね、行ってくる」
「行ってらっしゃい、あなた~」
「行ってらっしゃいませ、お父様」




