第十四話
「やあおはよう、アレイシアさん、アンさん」
「おはようございます、フィリップさん」
教室に着くと、情報屋キャラのフィリップが挨拶してきた。
そういや、あんまり情報を集めた事はなかったな。攻略対象とかどうでもいいし。
でもまあせっかくだから何か聞いてみるか? うーん、なにがいいだろう?
とりあえず無難に聞いてみるか。
「フィリップさん、最近何か面白い話はありまして?」
するとフィリップはニヤリと笑った。
「うーん。アレイシアさんになら教えてあげようかな。特別にね。
アレックス王子には気になる女の子がいるんだって」
俺がやった事のあるギャルゲーの情報屋もこんな喋り方をしていたなぁ…。
なんにせよ、やはり興味のない話だな。まあ一応会話をつないでおくべきかな?
「まあ、それは凄い情報ですわね。その女性はどなたなんですの?」
「それは秘密だよ」
ちょっとイラッとしたけど、まあそういうキャラなら仕方ないだろう。別に本当に知りたいわけでもないしな。
「また何か面白い話を聞かせてくださいね」
「うん。ハイウインド商会をよろしく」
やっぱり興味をひかれる情報はないか。
元は乙女ゲームの世界だものな。今は女性とはいえ、男として生きた時間の方が長い俺としては、まずは冒険に関係する情報を知りたいんだがなー。
この世界は結局、何なんだろうなぁ。
ゲームなら、第一作目の学園編で主人公を育成して、二作目の世界編でRPGしてラスボス倒して…。三作目は知らないが、なんらかの流れでゲームが続くわけだよな。
その中の、ゲームとしての俺の役割は。あいまいだが、主人公に嫌がらせをして、最後は負ける役目なんだよなぁ。
とはいえ、今の俺はそんなことはする気はないし。てか主人公が誰かも知らないし。嫌がらせのしようがまずないんだよなぁ。
つまり、俺という異物が入り込んでしまった今、この世界はゲームとしては進行しないわけで。だがバグとして俺が消されたり修正されたりしないところを見ると、やはり現実と化しているって考えるべきだよな。
物理法則は俺が知る限り地球と変わりないし…って言っても、勉強なんぞ全然していないから、多少地球と違っていてもわかんないが。
まあいいや。ゲームでも現実でも。俺は説明書やwikiは必要になってから読むタイプなんだ。
今の俺の目的は、世界を巡って、マジックアイテムを見つける事、だからな。
まずは、その為に強くならないと。
「ねえ、リル」
「なあに、アン?」
ぼーっとしている俺に、アンが話しかけてきた。
「イース王子の気になる人って誰かな…?」
ん? さっきのフィリップの話か?
俺は興味ないが…これが女子トークってやつなのか?
「気になるの、アン?」
「え? うーんと。…ちょっとだけ」
むう。なんだか面白くない。アン、お前もイケメンの王子様が好きなのか…。
だがそれも仕方ないか。所詮男は顔で選ばれる。顔さえよければどんな事をしても
※ただしイケメンに限る
で許されるからな。
前世で許されなかった俺はよくわかってる。
くそ。イケメンは滅びろ。
笑顔の裏で呪詛を振りまく俺を気にせず、アンは話を続けた。
「リルは気になる人はいないの?」
「いますわ」
「え。だれだれ?」
興味深々のアンに、俺は胸を張って答えた。
「私のお母様ですわ!」
「…」
アンの時が止まる気配がした。




