第十三話
疲れた。本当に疲れた。
「ナビ…後は任せていいかな…?」
『了解、マスター。普段通りの対応を行います』
「お願い」
ベッドに入ったが、目をつぶっても光景が浮かんでくる。音がないはずなのに聞こえてくる。
自分の手で命を奪うということの重みを、俺は実感していた。
いや、これは俺の心の弱さもあるのだろう。転生してステータスなんてものを得たとしても、結局は本来の資質が劣っているんだ。
「本来は乙女ゲームだろ…こんなハードモード、何で存在するんだよ…」
今はゲームの中に入ったが、こう言おう。
リアルなんて、クソゲーだ。
悪夢と戦いながら、朝を迎えた。疲れていたお陰で何度か眠ったが、夢に出る断末魔のお陰で、休んだ気はしなかった。
あー…今日も学校か…。
サボろうかな。両親は怒らないだろうし。一日くらい休んでも何かが失敗する訳じゃないよなー。
うだうだと考えながら起きずにいると、いつも通りメイド長が部屋に入って来た。
「おはようございます、アレイシアお嬢様」
「…おはよう」
よし、言おう。今日は疲れたから休むって。
そう言おうとして口を開き…だが罪悪感のせいだろうか、俺はこんな質問を投げ掛ていた。
「…ねえ。どうしてあなたは毎日起こしに来てくれるの?」
彼女の答えは何だろう?
仕事だから、だろうか。お金もらっているもんな。仕事はちゃんとしないと怒られるしな。
俺の質問に、彼女は不思議そうにこちらをじっと見つめてきた。
つい目を合わせられない俺に、そっと近づいたかと思うと、彼女は俺の手を優しく握った。
「お嬢様に、朝をお伝えするためですよ」
どういう意味だろうか。
それは、寝坊しないように…そんな意味だけじゃない、何かを伝える言葉という気がした。
「…そう」
「はい」
「今日も、朝になったのかしら」
「はい、お嬢様」
「じゃあ、起きなくてはね」
「はい。お支度の手伝いをさせていただきます」
俺は、登校することにした。
ふあー…。
馬車の中で、ついつい大きなあくびが出る。眠いものは眠いのだ。
びっくりしたアンが話しかけてくる。
「リル? 眠いの?」
「ええ…昨日は恐い夢を見てしまったの。おかげで眠いわ…」
ふあー…。
「そっかぁ。…じゃあしょうがないなあ。リル」
ポンポン、とアンは自分の膝を叩いた。
「学校に着くまで横になっていいよ」
膝枕…だと…?
女の子の膝枕とか、経験ないんですけど! やっべ、やっとモテ期が来たか?!
思わず笑いがこみ上げる。
ぐふ…ぐふふ…。
「リル、気持ち悪い…」
「あ、あら。ごめんなさい。ホホホ…」
ではお言葉に甘えて…。
「あなたは優しいわね、アン。これで可愛かったら最高だったのに」
「…」
静かになったアンの膝枕を堪能しつつ、馬車は進むのだった。




