9・くの字剣
盗賊か、野党狩りか、はたまたこのドラゴンを追ってきたハンターか・・・
やり合ってもいいが、卵にまわした手から腰の剣が遠い。
なんというへまだろう。
のど元が寒い。
突きつけられた剣は、研ぎ澄まされているが、刀身の半ばあたりからヘし曲がっている。
「く」の字形なのだ。
首を刈るためか、内蔵を掻き切るためか・・・いずれにしろ、便利そうではある。
「あなた」
ん?
「その卵を食べようと・・・!」
「ほえ・・・?」
不意な問いに、間抜け声が漏れてしまった。
しかし、オレをぎょっとさせたのは、問いの内容のせいではない。
逆行の細長いシルエットから発せられたそのソプラノ声は・・・
「きみ、女の子・・・・?」
「質問に答えるのはそちらの方よ。このドラゴンは、あなたが殺したのね!」
その声には、激烈な怒気が含まれている。
剣を突き込んでやろう、という憤怒が隠しきれない。
脅しではなく、本当にやってくれそうな勢いだ。
切っ先を突きつけたれたのどが、ゴクリと鳴る。
「は、話は長い・・・まず、この剣をどけてくれ・・・」
「あなたが殺したのっ!?」
「ばかっ・・・そんなわけがっ・・・だいたいこの軽装備で、こんな大層なモリを撃ち込めるかよ!」
「ドラゴンの腹を開いたでしょう!」
鋭利な切っ先が、のどに食い込んでくる。
つかを握る手に力が込もるのが伝わってくる。
首すじの薄皮が裂けていく。
これは本気だ。
なんとしてでも逃れねば。
「わかった・・・卵がほしいのなら、やるよ・・・」
コロロ・・・
抱えていた酒樽のような卵を、足元に転がしてやった。
相手は虚を突かれ、一瞬だけ、卵に目をやった。
今だ!
のど元の剣を、両手の平でぺたんとはさみ込む。
はっしっ・・・
「あっ!」
甲高い声が上がったが、もうこっちのものだ。
白刃に取ったのは、やたらと地幅が広い剣だ。
テコが利きやすい。
強くひねり返す。
と同時に、「くの字」に折れた角の部分を足蹴に払う。
剣はねじのように回転し、それを握る相手の体もくるりとひるがえった。
「あうっ・・・!」
こてん・・・




