10・対面
地面に倒れ込んだからだは、思ったよりもずっと華奢なものだった。
そうと知っていれば、次の行動では別の判断をしたかもしれない。
しかし、こちらはすでに跳ね起き、勢いのままに蹴りの体勢に入ってしまっている。
ぎゅむっ・・・!
「いたあいっ!」
躊躇するいとまがなかった。
起き上がろうとする相手のおでこのあたりに、足の裏がのってしまった。
それを踏み台に、後方に飛びしさる。
少女は再び、ころりと転んだ。
「あわわ・・・ごめんっ!」
ぴょんっ・・・タッ!
横たわるドラゴンの背中に飛び移ると、見晴らしはよくなったが、気分はあまりよろしくない。
少女を間違いなく怒らせた。
さっきよりもたぶん、ずっと。
「わ、わるかった・・・」
「おのれ・・・よくもこのわたしを・・・」
この言葉遣い・・・ガチで怖い。
なんという気位だろう。
尻もちをついて大地に仰向けにされたお姫様は、ゆらりとこちらに向き直った。
剣を今一度握りしめ、火を噴くような視線でにらみつけてくる。
「どういうつもり・・・?」
「いや・・・今のはつい流れで・・・トントン、トーンと・・・反射、っての?」
そのときだ。
はたっ・・・!
周囲を取り巻く、とてつもない闘気に気づいた。
無意識に、身の毛がよだっている。
「こいつは・・・」
大気に異様な圧力がひしめいている。
かつて何度も感じさせられた畏怖だ。
とっさに振り向いた。
頭上にひらいた夕焼け空から、巨大な瞳が見下ろしている。
「ドラゴン!!!・・・でかいっ!」
気流を受け止める翼が、鈍い金属色にとろんと輝いている。
この巨大さで、宙空に静止できるとは・・・
しかも、物音ひとつ立てないで。
ぶあっ・・・
マントのような翼がはためき、羽根先がゆったりと上下をはじめた。
そのたびに乱流が巻き起こり、虹色の光彩が散る。
まるで、黄色くもやがかかった大気を掃き清めているようだ。
「ドラゴンまで勘違いしてるのか・・・?」
まったく、善行を施したつもりが、とんだ厄災だ。




