7・鼓動
ドラゴンは、可燃性の胃液をのどへ逆流させて噴霧しつつ、牙で着火して炎を吐くのだ。
なんてことだ、この悪臭では、とてもじゃないが食べられない・・・
こいつを仕留めたドラゴンハンターは、ドラゴンの噴く炎で黒こげになって、この大地のどこかでのたれ死んでいるかもしれない。
それとも、この肉片が・・・いやいやいや、それは考えないようにしよう。
雑食のドラゴンだが、人間だけは食べないと言われている。
そこには、同等の知性を持つものに対しての敬意が垣間見える。
まあ近頃では、その敬意も危ういものになってきていようが・・・
とくん・・・
「・・・ん?」
ドラゴンの口の中に上半身を突っ込んでいるせいで、感じる。
のどの奥、腹の底から・・・
とく・・・とっくん・・・
鼓動・・・?
なにかが脈打つ、音とも、振動とも言えない、心細い周波が漏れてくるのだ。
このドラゴンは、間違いなく死んでいるはずなのに。
いやまてよ、このドラゴンは、たしか女の子・・・
!
はたと気づき、ドラゴンの口を飛び出した。
今度こそ剣を抜きながら、腹側にまわり込む。
とく・・・とくん・・・とく・・・っくん・・・
小さな小さな鼓動が、ドラゴンのハアトではなく、腹の奧で繰り返されている。
遠慮をしている場合ではない。
ずぶっ・・・ず・・・ず・・・ずい・・・
硬質なウロコのすき間に刃先を突き入れ、力を込めた。
すると・・・
カチンッ!
鉱物質な手応えがあった。
「やっぱり!」
卵をはらんでいる。
繁殖期のメスだったのだ。
ずびゅっ・・・!
そのまま腹を切り裂くと、管と粘膜にくるまった塊がごろりと転がり出てきた。
片脇にかかえるほどもある。
「うおお・・・」
たまご〜!
目玉のやつ、ゆでのやつ、スクランブルのやつ・・・襲いくる欲望を、しかし振り払った。
ねばねばの薄皮をはぎ取り、耳を押しつける。
とっくん・・・とっくん・・・とっくん・・・
確かな脈動が聞こえる。
しかし・・・こいつをどうしたものか?




