2・死んだドラゴン
ドラゴンが死んでいる。
疲れきった足を止め、むくろを見上げた。
「若いメスじゃないか・・・かわいそうにな・・・」
このあたりは繁殖地だと聞いてはいたが、これほど無防備な形で野垂れ死んでいるものもめずらしい。
誇り高いドラゴンは、自分が死んだ姿を野天にはさらさないものだ。
「なんてやり方だよ・・・」
背中や横っ腹に、何本ものモリが刺さっている。
思わずため息が漏れる。
ハンターに追われたのだ。
まだかすかに虹色のツヤを残した肌は、岩場でも這ったのだろうか、ズタズタに荒れている。
戦い、射られ、突かれ、のたうちまわり、追っ手を振りきったはいいが、無念にもこの場所で力尽きた・・・というわけか。
巨体を長々と横たえるその姿は、生前の威厳を完全に失い、無惨なものだ。
最近では、作法を知らないドラゴンハンターが幅を利かせている。
「質より、とにかく数を」という考え方で、近代的な火器にものを言わせ、根こそぎにしていくのだ。
空という空から、まるで穂でも刈り取るように漁っていく。
もともとドラゴンハンターといえば、その勇気と技術から、超人と崇められる存在だった。
ところが今や、その振る舞いは軽蔑の対象でしかない。
ここのところのやつらときたら、捕らえ方への敬意と節度を完全に失っている。
相手は、人間よりも理知的と言われるほどの尊い生き物なのだ。
もう少し、狩られる側の自尊心におもんぱかることはできないものか。
こうした乱獲のために、ドラゴンはずいぶんと減った。
絶滅さえ危惧されているほどだ。
「こんなところで、お互いにひとりぼっちか・・・」
ドラゴンの哀れな最期を気の毒に感じながら、わがひとり旅のゆく末を思う。
この横たわる姿を自分に置き換えても、なんの違和感もない。
それにしても、この壮麗な巨躯とウロコの輝きには、陶然と見惚れてしまう。
なんという美しさだろう。
こいつに向かって弓を引けるとは、ドラゴンハンターとはまったく太い神経をしているものだ。
いや、逆にこの優美さが、やつらに弓を引かせるわけだが。
まったく、世の中は不条理だ。




