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プラント ~大妖の森で君と暮らす~  作者: 天鵞絨色の紫陽花
テラリア大陸編

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いつもの場所


雲海を抜け、眼下に広がる景色が少しずつ近づいてくる。


見慣れた森が見えてきた。


「おお!見えてきたぞ!」


アギトさんの声が聞こえる。


「本当だ。もうすぐですね」


「ふふ、ようやく帰ってこられるね」


隣に座る白雨は、俺の腕を抱いたまま微笑んでいた。


「そうだね。やっぱり、ここが落ち着くよ」


「私もだよ」


白雨はそう言って、俺の腕に頬を寄せる。


しばらくすると、アギトさんは速度を落とし、森の開けた場所へと降りていった。


大きな翼が風を巻き起こす。


やがて地面に足がつき、俺たちはその背中から降りた。


「ふう……無事に到着じゃな!」


アギトさんは満足そうに声を上げる。


「アギトさん、ありがとうございました」


「なに、気にするでない!妾も久しぶりに白雨嬢とこのはと話せて楽しかったからのう!」


「私もだよ。色々と世話になったね」


「ははは!またいつでも遊びに来るがよい!天空城アルカディアはいつでも歓迎するぞ!」


「ありがとう。機会があれば、また訪ねさせてもらうよ」


白雨が答えると、アギトさんは大きく頷いた。


「うむ!では、妾はそろそろ戻るとするかの!それでは二人とも、また会おうぞ!」


大きな翼が広がり、赤い龍は空へと飛び立っていった。


その姿が小さくなり、やがて見えなくなる。


「行っちゃいましたね」


「そうだね。アギトも忙しいだろうからね」


白雨はそう言いながら、俺の腕を抱き直した。


「さて、私たちも帰ろうか」


「うん」


俺たちは並んで森の中を歩き始めた。


木々の間から差し込む光も、足元に広がる草花も、いつもと変わらない。


つい数日前まで、ここで白雨と散歩をしていた。


それなのに、随分と久しぶりに戻ってきたような気がする。


「……やっぱり、落ち着くね」


「うん。やっぱり、ここが一番だよ」


「ふふ。君にとっても、ここが帰る場所になったのかな」


「そうだね。もうすっかりここが居場所になったよ」


「それは嬉しいね」


白雨は柔らかく微笑んだ。


そして、俺の腕に絡めた手に少しだけ力を込める。


「……白雨?」


「もう少し、このままで歩いていたいんだ」


「いいよ。ゆっくり帰ろう」


「ありがとう」


そうして、俺たちはゆっくりと森の奥へ進んでいった。


⸻


家に戻ると、どこか懐かしい気持ちになった。


数日しか離れていなかったはずなのに、いつもの場所が少し違って見える。


「ただいま」


思わず口にする。


「おかえり、このは」


白雨が隣で答えた。


その言葉を聞いて、ようやく本当に帰ってきたのだと実感する。


「さて、少し休もうか」


「そうだね。アギトさんの背中に乗っていただけだけど、思ったより疲れたよ」


「そうかい?それなら、お茶でも淹れようか」


「お願い」


白雨は俺の腕から手を離すと、台所へ向かった。


その後ろ姿を眺めながら、俺は縁側へと腰を下ろす。


森には穏やかな風が吹いていた。


しばらくして、白雨がお茶を持って戻ってくる。


俺の隣に腰を下ろすと、湯呑みを手渡してくれた。


「ありがとう」


「どういたしまして」


二人でお茶を飲みながら、何気ない時間を過ごす。


こうしていると、天空城での出来事が遠い日のことのように思えた。


「……このは」


「ん?」


「また、君とこうして一緒に過ごせるようになってよかったよ」


白雨は湯呑みを置き、俺の肩にそっと寄りかかった。


「俺もだよ」


そう答えると、白雨は小さく微笑んだ。


何事もなかったかのように、いつもの日常が戻ってきた。


今回の出来事を通して、俺は改めて気づいたことがある。


白雨と過ごすこの時間が、俺にとってどれほど大切なものなのか。


その気持ちを胸に、俺は静かにお茶を飲み続けた。

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