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プラント ~大妖の森で君と暮らす~  作者: 天鵞絨色の紫陽花
テラリア大陸編

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妖精の戯れ


昼下がり。


このはは、白雨の森を散歩していた。


秋の風が木々の間を吹き抜け、色づいた葉が足元へと舞い落ちてくる。


「……いい天気だな」


特に目的があるわけではない。


ただ、家の中で過ごすのも少し飽きて、気分転換に歩いているだけだった。


そんなとき、目の前を青い光が横切った。


「……あれ?」


振り返ると、青白く輝く蝶がひらひらと飛んでいた。


「ルミナス?」


このはが声をかけると、ルミナスは一度だけ目の前を旋回した。


そして、このはの肩のあたりを通り過ぎると、森の奥へ向かって飛び始めた。


「……どこに行くんだ?」


ルミナスは答えない。


少し進んでは立ち止まり、このはがついてきているか確かめるように振り返る。


「……ついてこいってこと?」


蝶はひらひらと羽ばたいた。


肯定なのか、ただ飛んでいるだけなのかは分からない。


それでも、このはは少し興味を惹かれた。


「まあ、いいか。ちょっとだけね」


そう言って、ルミナスの後を追いかけた。


しばらく森の中を進むと、木々の間が開けた小さな広場に出た。


そこには、いくつもの光が浮かんでいた。


赤、黄色、緑、紫。


さまざまな色に輝く、小さな妖精たちだった。


妖精たちは何かを追いかけるように飛び回り、花の上に降りたり、落ち葉の間をくぐったりしている。


「……妖精?」


このはが呟いた瞬間、青い蝶が広場の中へ飛び込んだ。


すると、妖精たちの動きが一斉に止まった。


次の瞬間、何匹もの妖精がルミナスの周りへ集まってきた。


まるで、久しぶりに会った仲間を歓迎するように。


ルミナスも逃げる様子はなく、妖精たちの間をゆっくりと飛んでいる。


「……知り合いなのかな?」


このはは少し離れた場所から、その様子を眺めていた。


すると、一匹の赤い妖精がこちらを向いた。


目が合う。


赤い妖精はじっとこのはを見つめたあと、ほかの妖精たちへ向かって飛んでいった。


そして。


気づけば、色とりどりの光がこのはの周りへ集まっていた。


「……え?」


一匹が肩に止まり、もう一匹が目の前を横切る。


黄色い妖精は頭の周りをぐるぐると回り、緑の妖精はこのはの袖を引っ張っていた。


「ちょ、ちょっと待って。何?」


もちろん、返事はない。


妖精たちはただ楽しそうに飛び回っている。


そのうち、赤い妖精がこのはの手のひらへ小さな木の実を落とした。


「……これ?」


このはが木の実を見つめていると、妖精は少し離れた場所へ飛んでいき、こちらを振り返った。


まるで、何かを待っているようだった。


「……もしかして、投げればいいのか?」


このはは試しに、木の実をそっと妖精たちのほうへ投げる。


すると、妖精たちが一斉に追いかけ始めた。


横から弾く妖精。


なぜか途中で別のものに興味を移す妖精。


木の実はあちこちへ転がり、落ち葉の上を跳ねながら広場を横切っていった。


「……遊んでほしいのかな?」


このはが笑う。


すると、今度は別の木の実が手のひらへ落とされた。


「もう一回?」


妖精たちは答えない。


ただ、期待するように周囲を飛び回っている。


「……はいはい」


このはは木の実をさっきより遠めに投げる。


妖精たちは嬉しそうに追いかけていった。


その様子を、ルミナスが少し離れた場所から眺めていた。


青い光を揺らしながら、ゆっくりと旋回する。


「……ルミナスも遊ばないのか?」


このはが声をかけると、ルミナスはこのはの頭の上を通り過ぎていった。


そして、再び妖精たちの輪へ戻っていく。


どうやら、ルミナスなりに楽しんでいるらしい。


それから、どれくらい時間が経っただろう。


いつの間にか、このはは木の実を投げるだけでなく、色々な遊びに付き合わされていた。


一匹がこのはの周りを回り、別の一匹が落ち葉を舞い上げる。


すると、それを合図にしたかのように、広場中の落ち葉がふわりと浮かび上がった。


赤や黄色の葉が、このはの周囲をくるくると回り始める。


「うわっ……!」


葉の間を色とりどりの光が飛び交い、視界がきらきらと揺れる。


やがて、落ち葉が一斉に地面へ落ちた。


沢山の落ち葉がこのはにかかる。


「……絶対わざとだよね」


このはが苦笑すると、妖精たちは楽しそうに光を揺らした。


そのとき、広場の入口から声が聞こえた。


「このは?」


振り返ると、白雨が立っていた。


どうやら、散歩に出たこのはがなかなか帰ってこないので、様子を見に来たらしい。


白雨は広場の様子を見渡した。


落ち葉だらけのこのは。


周囲を飛び回る妖精たち。


そして、少し離れた場所で青い光を揺らすルミナス。


「……なるほど」


白雨は小さく笑った。


「ルミナスに連れてこられたのかい?」


「たぶんね……。ちょっとついていっただけなんだけど」


このはは頭の葉を取りながら答えた。


「気づいたら、こうなってた」


「ふふ。妖精たちに気に入られたようだね」


白雨がそう言うと、赤い妖精が彼女の目の前へ飛んできた。


白雨は指先を差し出す。


妖精は一度その周りを回ったあと、またこのはのほうへ戻っていった。


「どうやら、まだ遊び足りないらしいね」


「……もう少しだけなら、いいけど」


このはは妖精たちを見渡した。


相変わらず、彼らが何を考えているのかはよく分からない。


けれど、楽しそうに飛び回る姿を見ていると、こちらまで自然と笑ってしまう。


ルミナスがこのはの肩に止まった。


青い羽が、午後の日差しを受けて淡く輝いている。


「……お前も、なかなか自由だよな」


このはが小さく呟くと、ルミナスは答える代わりに、肩の上でゆっくりと羽を動かした。


白雨はそんな二人を見て、穏やかに微笑んだ。


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