秋の散歩
忙しくてこんな時間に投稿することに…。
毎日投稿してきたけど明日分間に合うか…!
秋が深まり、白雨の森にも少しずつ変化が訪れていた。
木々の葉は赤や黄色に色づき、風が吹くたび、落ち葉が静かに地面を舞う。
「……すっかり秋らしくなってきたね」
縁側から庭を眺めていた白雨が、そう呟いた。
「そうだね。少し前までは、こんなに涼しくなかったのに」
このはも庭へ目を向ける。
この世界に来てから、もう半年ほどになる。
最初は見慣れなかった景色も、今ではすっかり日常の一部になっていた。
「ねえ、このは。今日は少し森を歩いてみないかい?」
「森を?」
「うん。せっかくの季節だからね。家の中にいるだけでは、少しもったいないだろう?」
白雨は穏やかに微笑んだ。
「いいね。俺も、少し歩きたいと思ってたところだよ」
二人は身支度を整え、家を出た。
森の中は静かだった。
風に揺れる木々の音や、落ち葉を踏む小さな音が聞こえてくる。時折、紫色の花が道の脇に顔を覗かせていた。
「この森も、季節によってずいぶん景色が変わるんだね」
「そうだね。春には春の、夏には夏の美しさがある。秋も、冬もね」
白雨は足元に落ちていた葉を拾い上げた。
「同じ場所でも、いつも同じ景色というわけではないんだよ」
「白雨は、ずっとこの森を見てきたんだよね」
「もちろん。随分と長い時間をね」
白雨は葉を眺め、そっと指先で撫でた。
「それでも、こうして季節が変わるたびに、新しい発見があるものさ」
「……そっか」
このはは、隣を歩く白雨を見た。
長い時を生きてきた彼女にとって、季節の移り変わりなど、何度も見てきたものだろう。
それでも、白雨は今の景色を楽しんでいる。
そんな姿が、なんだか少し嬉しかった。
しばらく歩いていると、道の傾斜が少しずつ急になってきた。
落ち葉が積もった地面は、ところどころ滑りやすくなっている。
「……足元に気をつけてね」
「ああ。ありがとう」
このはは慎重に足を進めた。
そのとき、隣を歩いていた白雨が、ふとこちらを見た。
「どうかしたのかい?」
「いや、白雨こそ大丈夫かなって」
「私なら問題ないよ。この程度の道、どうということもないからね」
「それならいいけど」
そう答えてから、このはは少し考えた。
そして、ごく自然な動作で白雨の手を取った。
「……念のためね」
白雨は一瞬、目を瞬かせた。
「ふふ。そうかい」
「うん」
このはは前を向いたまま答える。
自分から手を繋いだことに、少しも意識していないわけではなかった。
けれど、わざわざ手を離す理由もなかった。
白雨は繋がれた手を見下ろし、それから、このはの横顔へ視線を移した。
「……優しいね、このはは」
「そうかな?」
「そうとも」
白雨は小さく笑った。
そして、繋いだ手にほんの少し力を込める。
このはも、それに応えるように手を握り返した。
二人はそのまま、ゆっくりと森の中を歩いていった。
やがて、少し開けた場所へ出た。
そこからは、色づいた木々と、紫色に染まる森の一部を見渡すことができた。
「……綺麗だな」
このはが思わず呟く。
「そうだろう?」
白雨は、どこか誇らしげに微笑んだ。
「私の大切な場所だからね」
「うん。……白雨らしい景色だと思う」
その言葉に、白雨は少しだけ目を細めた。
「それは、嬉しいことを言ってくれるね」
二人は並んで景色を眺めた。
繋いだ手は、まだそのままだった。
やがて、白雨がそっと口を開く。
「……もう少し、こうしていてもいいかい?」
このはは彼女を見た。
「うん。俺も、もう少しここにいたい」
白雨は何も言わず、嬉しそうに微笑んだ。
秋の風が、二人の間を静かに通り抜けていく。
色づく森の中で、二人はしばらく手を繋いだまま、穏やかな時間を過ごしていた。
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