季節の変わり目
このはがこの世界に来てから、約半年が経とうとしていた。
秋の風が、縁側を静かに吹き抜けていく。
庭に咲く紫陽花は少しずつ色を落とし、木々の葉も、ところどころ秋らしい色へと変わり始めていた。
縁側に座り、お茶を飲んでいたこのはは、ふと腕をさすった。
「……少し寒くなってきたね」
隣に座っていた白雨が、こちらを見る。
「そうだね。もう秋だからね」
そう答えた白雨は、少しだけ考えるような素振りを見せた。
そして、何かを思いついたように微笑むと、このはの隣へと身を寄せた。
白雨が、このはの腕にそっと自分の腕を絡めた。
「……白雨?」
「こうしていれば、少しはお互い暖かいだろう?」
白雨は何食わぬ顔でそう言い、さらに身体を寄せた。
このはは、隣にいる白雨を見下ろす。
植物の大妖である彼女が、この程度の肌寒さを気にするとは思えなかった。
おそらく、自分が腕をさすっているのを見て、いい口実を見つけたとばかりに近づいてきたのだろう。
「……まあ、そうだね」
それでも、このはは白雨を引き離そうとはしなかった。
白雨は満足そうに目を細める。
「ふふ。」
「……白雨、絶対寒くないでしょ」
「さて、どうだろうね?」
悪びれる様子もなく、白雨は微笑んだ。
そして、まるで当然のことのように、このはの肩へ頭を預ける。
「……白雨?」
「別に構わないだろう?」
いつもと変わらない、落ち着いた声。
けれど、どこか甘えるような響きがあった。
このはは小さく息をついた。
「……はいはい」
そう言いながらも、肩を貸したままでいる。
白雨が嬉しそうにしているのを見ると、わざわざ指摘する気もなくなってしまった。
それに。
自分にだけ、こんなふうに甘えてくれるのなら。
悪い気はしなかった。
二人はそのまま、しばらく縁側で過ごした。
風が吹くたび、庭の草花が静かに揺れる。
白雨は肩に寄り添ったまま、穏やかな表情で庭を眺めていた。
「……秋も、悪くないね」
「そうだね」
このはは答えながら、隣の白雨をちらりと見る。
白雨は、まだ離れるつもりがないらしい。
……まあ、いいか。
このはは小さく微笑み、再び庭へと視線を戻した。
少し肌寒くなってきた秋の日。
二人の間には、風の冷たさを忘れてしまうような、穏やかな時間が流れていた。
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