領域効果
永刻時計塔には、再び時計の針が刻む音が響いていた。
刻守は懐中時計を手にしたまま、少し先へと視線を向ける。
「先ほどとは少し違ったものをお見せしましょう」
刻守は静かに懐中時計を開いた。
「これから、時間から切り離された空間を作ります」
「時間から……?」
「ええ。実際に見ていただいた方が早いでしょう」
刻守は足を止めた。
「永刻時計塔は、私の領域ですから外ではできないことも可能になります」
「領域?」
「ええ。この塔の内部では、時間そのものを私が管理しております」
「まずは、防御からお見せしましょう」
刻守が懐中時計を開く。
ゴーン。
時計塔の鐘が鳴った。
すると、刻守の前の空間が歪むことなく静止した。
何かがあるわけではない。
それでも、その場所だけが世界から切り離されたように見える。
「この空間の時間を止めております」
「……これが壁?」
「ええ」
刻守が手を伸ばす。
指先がその空間に触れる。
それ以上は進まない。
「時間そのものが止まっているため、外からの干渉を受けません」
このはが目の前の空間を見る。
「本当に、何も通れないんだ……」
「はい」
白雨が静かに口を開く。
「刻守の厄介なところは、こういうところなんだよ」
「恐縮です」
刻守は懐中時計を閉じる。
止まっていた空間が元の時間を取り戻す。
「そして、もう一つ」
刻守は少し離れた場所へ視線を向ける。
「攻撃にも使えます」
ゴーン。
再び鐘が鳴る。
すると、何もない空間に一本の境界が現れた。
見た目には、ただ空間に線が入っただけ。
「この部分だけを、時間から切り離しています」
刻守が説明する。
白雨が作り出した木の棒を軽く投げる。
棒が境界へ触れた瞬間。
すっと、二つに分かれた。
「……」
このはは言葉を失う。
「空間そのものが、切断面になっているんです」
刻守は懐中時計を閉じる。
切断された棒が床へ落ちた。
「これが、この時計塔で使える私の力の一部です」
「……すごい」
このはは思わず呟いた。
「流石に時計塔の中以外だと使えないんですよね?」
「その通りです」
刻守は穏やかに答える。
「だからこそ、ここは私にとって特別な場所なのです」
白雨が時計塔を見上げる。
「大妖の持つ領域というのは、その大妖にとって大きな意味を持つからね」
「ええ」
刻守は小さく微笑む。
「ここは私が最も私らしくいられる場所ですから」
時計塔の中に、静かに時計の針が進む音が響いていた。
励みになりますので良ければブックマーク、評価、感想よろしくお願いします。




