反則
朝。
縁側でお茶を飲んでいると、白雨がふと口を開く。
「……ねえ、このは」
「ん?」
「そろそろ、刻守のところへ行ってみないかい?」
「刻守さんのところ?」
「そう。六大妖の中で、まだ会っていないのは刻守だけだからね」
「そういえばそうだったね」
「一度くらい、顔を見に行ってみよう」
「うん。俺も会ってみたい」
こうして二人は、刻守の領域である永刻時計塔へ向かうことになった。
出発の準備をしながら、このはがふと考える。
「でも、結構遠いんだよね?」
「そうだね」
「じゃあ、途中で一泊することになるかな。泊まる場所はどうしようか」
白雨は少しだけ考えるような素振りを見せてから、
「問題ないよ」
「……そうなの?」
「うん。心配しなくていい」
「ならいいけど……」
どこか含みのある言い方だった。
けれど、このはは深く考えずに荷物をまとめる。
二人は家を出発した。
森を抜け、街道を歩き、普段あまり行かない場所へ進んでいく。
途中で景色を眺めたり、休憩したりしながら、二人はゆっくりと旅を続けた。
そして夕方。
「……そろそろ日が暮れそうだね」
「そうだね。今日はここまでかな」
このはが周囲を見渡す。
「でも、泊まる場所……」
そこまで言ったところで、白雨が地面に手を触れる。
「大丈夫だよ。そこで見てておくれよ」
「え?」
地面から植物が伸び始める。
木の根が地面を這い、蔦が絡み合い、周囲の木々がゆっくりと形を変えていく。
やがて木材が組み上がり、壁ができ、屋根が作られていく。
数分後。
二人の目の前には、小さなログハウスが建っていた。
「……」
このははしばらく黙って建物を見つめる。
「……反則じゃない?」
「ふふ。反則かい」
白雨は何でもないように笑った。
「植物があれば、このくらいはできるからね」
「最初からこれを作るつもりだったの?」
「さて、どうだったかな」
「……絶対そうだ」
白雨はくすりと笑う。
二人は出来上がったログハウスへ入り、荷物を置く。
外はすっかり夕暮れになっていた。
「なんだか、ちょっとした旅行みたいだね」
「ふふ。そうかもしれないね」
こうして二人は、刻守のいる永刻時計塔を目指す旅の途中で、一夜を過ごすことになった。
励みになりますので良ければブックマーク、評価、感想よろしくお願いします。




