手入れ
昼下がり。
このはは縁側から庭を眺めていた。
紫陽花や蔦、色とりどりの花が咲いている庭はいつも通り綺麗だったが、よく見ると伸びすぎた草や、少し乱れている場所もある。
「……そういえば、最近ちゃんと庭の手入れしてなかったな」
「そうだね」
隣にいた白雨も庭へ目を向ける。
「星架に連れていかれたり、ツツジのところへ行ったりしていたからね」
「そう考えると、結構いろいろあったな」
「ふふ。随分と賑やかだったね」
白雨は立ち上がると、庭へ降りていく。
「久しぶりに、少し手入れでもしようか」
「うん」
二人で庭の手入れを始める。
このはは伸びた草を抜き、花の周りを整えていく。
白雨は蔦を整えたり、伸びすぎた枝を軽く剪定したりしていた。
植物の大妖である白雨なら、本来なら手を触れずとも庭全体を整えることができる。
けれど今日は、それをしなかった。
「白雨なら、もっと簡単にできるんじゃない?」
「できるよ。でも、こうして一緒にやるのも、悪くないからね」
白雨は少しだけ笑った。
「……そうだね」
その言葉に、このはも笑った。
それからしばらく、二人は黙々と庭の手入れを続けた。
特別な話をするわけでもない。
ただ隣にいて、土に触れ、植物を整えていく。
やがて一通り終えると、二人は縁側へ戻った。
白雨が淹れたお茶を並べ、並んで庭を眺める。
「……疲れた」
「ふふ。庭いじりくらいで疲れてしまったのかい?」
「久しぶりだったからね」
「そうかい」
白雨は湯呑みを置くと、このはとの距離を少しだけ縮めた。
そして、そのまま肩に頭を預ける。
「……白雨?」
「今日は少し、このままでいたいんだ」
「うん」
それ以上、このはは何も言わなかった。
白雨も何も言わない。
ただ肩を預けたまま、静かに庭を眺めている。
風が吹くたび、紫色の花々がゆっくりと揺れる。
「最近は少し、賑やかすぎたからね」
白雨は目を細める。
「私は、こういう静かな時間も好きだよ」
「俺も好きだよ」
そう言って、このはは白雨の頭にそっと手を置いた。
白雨は少しだけ嬉しそうに目を閉じる。
何か特別なことが起きるわけでもない。
ただ二人で庭を手入れして、お茶を飲んで、肩を寄せている。
そんな穏やかな一日だった。
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