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プラント ~大妖の森で君と暮らす~  作者: 天鵞絨色の紫陽花
テラリア大陸編

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一人の夜


夜。


いつもなら、この時間には隣にこのはがいる。


けれど今日は、静かな部屋に私一人だけだった。


「……静かだね」


誰に言うでもなく呟く。


夕食を終えてから、もうしばらく経っている。


このははまだ帰ってこない。


星架がついているから心配する必要はない。


きっと今頃、常夜街で楽しく過ごしているのだろう。


そう思っていても、いつもなら聞こえてくる声がないだけで、部屋が妙に広く感じられた。


私はソファに座り、ぼんやりと窓の外を見る。


月明かりに照らされた紫の花々が、風に揺れている。


「……ふふ」


思わず小さく笑った。


「私も、随分と贅沢になったものだね」


昔なら、一人でいることなど何とも思わなかった。


千年という長い時間を生きてきた中で、一人の夜なんて数え切れないほどあった。


それなのに。


このはと暮らすようになってからは、隣にいることが当たり前になっていた。


「……早く帰ってこないかな」


ぽつりと零した言葉に、自分で少し驚く。


「……これは、本人には言えないね」


そう呟きながらも、口元にはわずかな笑みが浮かんでいた。


ふと、テーブルの上に置かれた湯呑みに目が留まる。


いつもなら二つ並んでいるそれが、今日は一つしかない。


私はもう一つの湯呑みを取り出して、隣に置いた。


「帰ってきたら、また淹れてあげよう」


静かな部屋に、私の声だけが響く。


その時だった。


窓の外から、淡い光が近づいてくる。


「……ルミナス?」


青白く光る蝶が、ひらひらと部屋の中へ入ってきた。


ルミナスは何も言わず、私の周りをゆっくりと飛び始める。


「ふふ……」


その姿を見て、私は小さく笑った。


「慰めに来てくれたのかい?」


返事の代わりに、ルミナスは私の肩の近くをふわりと舞う。


「……ありがとう」


私は手を伸ばす。


ルミナスはその指先に近づき、しばらくの間そばにいた。


一人だった部屋に、小さな光が一つ増えた。


それだけで、さっきまで感じていた寂しさが少しだけ薄れていく。


「このはが帰ってくるまで、付き合ってくれるかい?」


ルミナスは答えない。


ただ、私の周りをゆっくりと飛び続けていた。

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