大道芸
常夜街を歩いていると、通りの一角から賑やかな声が聞こえてきた。
「おや、星架様じゃないか!」
振り向くと、そこでは一匹の妖が大道芸を披露していた。
五つの玉を器用に投げ上げ、次々と受け取っている。
「やあ。今日もやってるね」
「星架様も見ていくかい?」
「もちろん。せっかくだしね」
星架が足を止めると、周りにいた妖たちも自然と集まってくる。
「星架様、この前の祭り楽しかったよ!」
「今度はもっと派手なのをやろうか」
「それは勘弁してくれ。店が壊れちまう」
そんなやり取りを眺めながら、このはは少し意外に思っていた。
星架は気まぐれで、何を考えているのか分からない。
それなのに、この街の妖たちは星架に気軽に声をかけている。
「……星架さんって、慕われてるんですね」
「そうかな?」
星架が笑った、その時だった。
「……あれ?」
大道芸人が不意に手を止めた。
「どうしたの?」
「玉がない」
足元や荷物を探してみるが、どこにも見当たらない。
「さっきまで五つあったんだけどな……」
「いい暇つぶしになりそうだし一緒に探してあげるよ」
「ありがとうございます!」
こうして、星架とこのはは大道芸人の小道具を探すことになった。
通りを戻りながら、二人で辺りを見ていく。
すると、このはが路地の入り口で足を止めた。
「……星架さん」
「ん?」
「これ、さっきの玉じゃないですか?」
道の端に、赤い玉が一つ転がっていた。
「本当だ」
拾い上げて周囲を見ると、少し先にも同じ玉が落ちている。
「こっちにもあります」
二人で玉を追っていく。
すると、路地の奥から小さな物音が聞こえた。
覗いてみると、そこには一匹の小さな妖がいた。
手には最後の一つの玉。
何度も落としながら、それでも必死に投げては受け取ろうとしている。
「あ……」
このはが声を漏らす。
妖がこちらに気づき、固まった。
「……ごめんなさい」
星架はその妖を見つめる。
「君が持ってきたの?」
「……うん」
「どうして?」
「僕も大道芸をやってみたかったから……」
怒られると思ったのか、妖は俯いた。
けれど星架は、いつもの調子で笑った。
「そっか」
そして、妖の手にある玉を指差す。
「だったら、今度はちゃんと本人に教えてもらいなよ」
「……怒らないの?」
「怒る理由がないじゃないか。ただ、勝手に持っていくのは駄目だよ」
「……うん」
そこへ大道芸人がやってきた。
「お前だったのか」
妖は申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめんなさい……」
「ったく……」
大道芸人はため息をついた。
けれど、その表情は怒っているというより困ったようなものだった。
「やってみたいなら、最初から言ってくれりゃいいのに」
「……僕にも教えてくれる?」
「もちろんさ」
その言葉を聞いた妖の顔がぱっと明るくなる。
「星架様もありがとうございやした!」
「どうってことないよ、夜はまだこれからだからね」
星架はカラカラと笑いながら答える。
「せっかくの夜だ、僕も魅せてあげよう」
先程の場所に戻り、星架は大玉に乗りながら
玉5つに加えてナイフも器用に投げ回して行く。
「星架様すげぇ!」
「こっちで星架様がパフォーマンスしてるみたいだぞ!」
妖たちがすぐに集まってきて辺りは大盛況になった。
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「星架さん、さっきは凄かったですね!」
「そうだろう、このは。僕もなかなかやるものさ」
「やっぱりここの皆さんは星架さんのことが好きなんですね」
「ここは僕の街だからね」
そう言って、笑いながら星架は再び歩き出す。
このはもその隣へ並んだ。
常夜街は終わらない夜の街というだけではない。
そこには、星架と共に生きる妖たちの暮らしがあった。
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